名古屋を舞台に、現実と異世界の狭間で起こる怪異事件を、異能を持つ個性的なキャラクターが解決に導いていきます。
丁寧な情景描写はわかりやすくて、名古屋の風景は勿論のこと、鮮やかな色味を持つ異世界の情景が手に取るように浮かんできます。繊細な心理描写も秀逸で、感情移入を高めます。
主人公の服部少年はセンシティブで、何やらトラウマを持ってるのが窺えます。彼が抱える紙一重な危うさを、探偵の樹神先生や妖艶な美女の百花さんがサポートをして事件を追っていくわけですが、一筋縄ではいかないスリリングな展開が彼らを待ち受けています。どの登場人物も魅力的で、その世界にいつまでも浸りたい気分になりますね。
また、ご当地小説としての側面も色濃く、名古屋のグルメも紹介されていて、知識欲だけでなく食欲まで刺激されます。本当に美味しそうなので、夜中に読まれる方はご注意を。
書店に並んでいてもおかしくない本作を是非、ご覧ください。
名古屋の馴染みの場所、馴染みのグルメが描写されるすぐ側で展開される、不思議な物語。
物語の仕掛けの巧みさ、人物の立体的な造形、設定の説得力。たしかな筆力で描かれる物語に感嘆します。
謎の過去を抱えた心やさしい少年。有能で見た目イケメンだけどどこか残念な先生。頼りになるはんなりお姉さん。それぞれ味と背景があって魅力的。
わらべ唄や子供の遊びって、不思議と背中をぞくっとさせることがありますよね。それが効果的にちりばめられて、怪異への入口になっています。
飯テロつき。名古屋飯の虜になりそうです。
もちろん地元の方でなくとも楽しめます。ぜひトワイライトゾーン名古屋をお楽しみください。
『3-9 選べるもの』まで読んでの感想です。
ここまでで93,350文字、何度も「見事だな」と思う箇所があったので、★3つで。
連作短編として各シリーズしっかりまとめつつ、全体を貫く謎があり、飽きさせません。各シリーズの終盤に至っても、これでもかと展開を盛り込んでくるのが本当に見事。
また本作は、名古屋グルメで「味覚」を、童謡によって「聴覚」まで刺激してきます。
ストーリーのおもしろさはもちろん、キャラクターの心理描写が繊細ですし、これまで書かれた長編を読むと、書き続けていく地力と引き出しの多さを感じる作者様です。
どういう形で完結するのか楽しみです。
樹神探偵事務所に持ち込まれる依頼は、いわゆる浮気調査や素行調査などではありません。霊にまつわる不可思議な事件。視えない者にとっては解決が難しい事件に、樹神先生と助手の朔が挑みます。
能力を使いながら怪異と対峙するシーンは、バトルものが好きな方も大満足していただけるほどハラハラさせられます。
人に対して良くないことをする怪異であっても、もとは現世で普通に暮らしていた人々。在りし日の記憶が紐解かれるとき、涙腺が緩んでしまいます。訳あって成仏できなかった魂を、彼らはどのように導いていくのでしょうか。
伏線回収が絶妙で、ほっこりするバディものをお楽しみください。作中に登場する調度品の美しさ、食べ物の描写も必見です。