ご当地・名古屋を舞台に、探偵と助手が怪異事件を追う!
名古屋では、原因不明の失踪事件や転落事故など、この世の尺度だけでは計り知れない事件が次々に起こります。
闇の感情を受信する主人公・服部少年を始め、探偵も、仕事協力仲間の和装美人も、みなさま特殊能力持ち。
頼りがいあるメンバーに支えられ、まだ自分に自信の持てない少年は、少しずつ自分自身とも向き合っていきます。
怪異を解決した先に、見えてくるものは何か。
今いる場所は、現世(うつしよ)なのか、幽世(かくりよ)なのか。
幾種類もの名古屋めしを堪能しながら、夕暮れ色に染まる世界を少年と一緒に味わってみませんか。
昼と夜の狭間である黄昏時。また、新たな不思議が目を覚ますかもしれません。
私が万人にお薦めできる陽澄すずめ様の最新作は、名古屋の街中にあるちょっと風変わりな探偵事務所が舞台。そこに持ち込まれる風変わりな事件を取り扱うのは、風変わりな探偵さんと、その助手の少年。芝居がかった振る舞いが似合う探偵さんに比べたら、少年は至って真面目そのもの。でもそんな探偵事務所に勤めるぐらいだから、少年にもやっぱり風変わりなところがある。それはーー
少年は人や怪異の想いと極めて共感しやすい、特殊体質持ちだったのです。
もうこれだけで興味惹かれるでしょう?
彼らは様々な怪異と対峙するけど、別に切った張ったの闘いでねじ伏せるわけじゃない。怪異の想いを汲み取って、然るべきところに返そうとする。ただその想いはあまりに強すぎたりして、少年は振り回されることもしばしば。時に迷うこともあるけど大丈夫。彼の周りには探偵さんや、煙を扱う和服美人のおねえさんや、頼りになる人がいるのだから。だから少年は様々な想いに触れていくうち、やがて想いにかけるべき言葉を見出だすのです。
そう、このお話は怪異譚でありながら、少年の成長の物語でもあります。特殊体質に悩まされて不安を抱えていた少年が、一歩ずつ成長する姿には、思わず目頭が熱くなること請け合い!
『共感応トワイライト』是非皆さん、ご一読ください!
地方を舞台にした小説がたくさんある中で、名古屋を舞台にした小説はあまり見かけません。京都モノと比べると圧倒的に少ないですよね。きっと、お洒落な雰囲気がしないのでしょう…。
故郷大好き! というわけでもないのですが、名古屋出身の人間としては寂しい気持ちでおりました。
そんな時出会ったのが、名古屋を舞台としたこちらの作品です。
不思議な力で様々な事件、怪異を解いていくお話なのですが、私としては名古屋めしの登場に惹かれます。鬼まんじゅう、食べたいです。久しぶりに帰省したいです。
また、知っている地名、時折出てくる名古屋弁にもほっこりします。あれ、自分って意外と名古屋のこと好きだったんだなぁと気付かされました。
お話の本筋と外れたレビューになってしまいましたが、愛知、名古屋出身の方はぜひ読んでみてください。
そうでない方も、この作品を通して名古屋の魅力を知っていただけたら嬉しいです。
「開け」
異能を乗せた声が響き、世界が赤く染まる。そこは現世と幽世の狭間。
容喙声音を操る探偵と共感応を持つ少年助手が、哀しき怨霊と対峙する──
” 共感応 ” とは、相手の感情を受信してしまうという能力。
その能力を持て余している服部少年は、探偵樹神の元で力のコントロールを学びつつ、探偵助手をしている。
舞い込むのは怪異絡みの案件ばかり。洒落たスーツをパリッと着こなす樹神先生は、今日も気障ったらしいお辞儀で美しき依頼人をお出迎え。
異能調香師である百花の力も借りつつ、二人は問題解決に乗り出すのだが……
童謡に関連した怪異というのがおもしろ怖い。(童謡って、怖い歌多いですよね)
過去の事件も絡み合い、徐々に謎が深まると共に少年の悩みも深まっていく構成に引き込まれる。不甲斐ない自分に苛立ち蹲っていた彼が、心を開き迷いを捨てて歩み出す姿は号泣必至。壮絶な過去と驚愕の真実を乗り越えた「彼ら」に拍手を送りたくなる。
垂涎の名古屋グルメや、樹神先生のちょっと胡散臭いカッコよさ、癒し系美女な百花さんの和装ファッションにもご注目! 見どころ、笑いどころ、泣きどころ満載の、優しさ溢れる感動作です。
あと、名古屋弁ってなんかいいですね。
こちらの作者さんは読ませる物語を書くのがお上手なのですが、今作もとても面白かったです!
生者であれ死者であれ、他人の感覚を自分のように感じてしまう共感能(エンパス)を持つ男子高校生の服部 朔は、幼い頃から自身の能力に悩み、苦しんできました。
彼はひょんなことから怪異的な事件を解決する探偵事務所でバイトすることになり、樹神(こだま)先生の助手として様々な事件に遭遇します。
こちらの作品は連作短編という形で書かれていますが、全体を通してきちんと起承転結の流れになっている所が秀逸。
事件に遭遇する度に服部少年は相手に共感し、悩み、そして頼りがいのある樹神さんと百花さんという大人二人に導かれて少しずつ成長していきます。
最終章での服部少年の活躍に胸が熱くなるのは、これまでの章の積み重ねがあったからこそ。
誰もが知るわらべ歌をモチーフにした導入で読者をぐっと引き込み、事件の全容が紐解かれていくに連れて明らかになる、人間たち(怪異達)の弱さや苦しさには服部少年同様共感せずにはいられません。
怪異を扱う為、ゾワッと背筋が震えるシーンはあるものの、どの事件も最後はきちんと綺麗に落としてくれるのでとても気持ちのいい読了感を得られます。
一見胡散臭い(?)イケオジ探偵と少年のバディもの、読み応えのある作品を読みたい方におすすめの一作です!