たった二つの冴えたやり方

 自主企画『第三回偽物川小説大賞』に書き下ろし作品として提出され、そして三十八作品の頂点となる「大賞」に輝いた作品がこちら。

 SFだ。すごくSFだ。それも古典的な意味でのSFだ。と、冒頭で思いました。この作品は冒頭が強いです。読み進めるうち、「どういう種類のSFかな?スペースオペラ的な展開になったりするのかな?」とかも思いました。

 で、読み終えましたが、結論からいえばスペースオペラではないですね。もっとハードな奴でした。でもすっごく面白い。生物学系のSFだ。私が個人的に読むSFの八割以上は神林長平で、神林長平は工学系のSFの旗手なので、すごく新鮮でした。

 内容について触れていきます。神とは何か、という問題に対する、少なくとも私が知っている限りでは類を見ない、理知的で冷徹な、メスを入れていくかのような精緻なアプローチ。斬新でした。

 そして、単に「SFとして優れている」だけではなく、小説としてもちゃんと温もりがあり、人の愛があり、文芸として優れている。ほとんど完璧に近い作品だと思います。