神への長い道

ファーストコンタクトはSFの代表的ジャンルであるが、本作に登場する生命体はなかなかにユニークである。

8年前、ある電磁波が地球に向けて発信された。その内容は星間航行に必要なあらゆる理論、発信者たちの母星と思われる惑星の座標、そして未知の生物種の外見的特徴。これによって人類は誰もが宇宙へ簡単に行けるようになった。

そして民間人の伽と銀葉は、人類に接触を図った存在が宇宙空間にスターゲートを開いた際にたまたま一番近くにいたというだけで、ファーストコンタクトを務める大使に任命され、その惑星へ向かうことに。そこで二人が目撃したのは何者かが建造したと思わしき巨石構造物。しかしその中には虫のような生命体はいても知性を感じさせる生命の存在は見当たらない……。そして伽は観察を続けるにつれ、この構造物に隠されたとんでもない秘密に気付いてしまう!

未知との遭遇で大事なのは、地球外生命との出会いを通じて、いかに既存の常識を揺さぶるか。そういう意味では本作は大成功していると言える。未知の生命体との出会いをきっかけに、一気に神の存在について話を飛躍させるアクロバットぶり、そしてそれを支えるロジックは必見。短い中にファーストコンタクトの面白さを詰め込んだ優れた一品だ。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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