ファーストコンタクトはSFの代表的ジャンルであるが、本作に登場する生命体はなかなかにユニークである。
8年前、ある電磁波が地球に向けて発信された。その内容は星間航行に必要なあらゆる理論、発信者たちの母星と思われる惑星の座標、そして未知の生物種の外見的特徴。これによって人類は誰もが宇宙へ簡単に行けるようになった。
そして民間人の伽と銀葉は、人類に接触を図った存在が宇宙空間にスターゲートを開いた際にたまたま一番近くにいたというだけで、ファーストコンタクトを務める大使に任命され、その惑星へ向かうことに。そこで二人が目撃したのは何者かが建造したと思わしき巨石構造物。しかしその中には虫のような生命体はいても知性を感じさせる生命の存在は見当たらない……。そして伽は観察を続けるにつれ、この構造物に隠されたとんでもない秘密に気付いてしまう!
未知との遭遇で大事なのは、地球外生命との出会いを通じて、いかに既存の常識を揺さぶるか。そういう意味では本作は大成功していると言える。未知の生命体との出会いをきっかけに、一気に神の存在について話を飛躍させるアクロバットぶり、そしてそれを支えるロジックは必見。短い中にファーストコンタクトの面白さを詰め込んだ優れた一品だ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)
人類の元に届いた宇宙人のメッセージ。その手紙に従って宇宙人に会いに行く二人が出会ったものとは……というSFミステリー。
告白すると、最初はノット・フォー・ミーな作品である、と感じ「ました」。
そう、過去形です。
これが4話に入って「おっ!?」と変調。テーマである「神」についての語りがかなり良かったのですが、その後の展開も予想外のどんでん返しでたたみかけられ、最後に粋な台詞で締められて脱帽してしまいました。
「実はあの巨大構造物は……」「いやそれは無理あるでしょ」「でもそれは人類も同じでしょ」というやり取りの所は、た、確かに! という凄みがあります。
あれが神さまだったんだよ! という部分まではまだよくある展開なんですが、それができあがった経緯と、「メガリスにとってのフファット」の回答が凄すぎて、予想の何段も上を行かれました。
のような作品に出会えたことを感謝します!
自主企画『第三回偽物川小説大賞』に書き下ろし作品として提出され、そして三十八作品の頂点となる「大賞」に輝いた作品がこちら。
SFだ。すごくSFだ。それも古典的な意味でのSFだ。と、冒頭で思いました。この作品は冒頭が強いです。読み進めるうち、「どういう種類のSFかな?スペースオペラ的な展開になったりするのかな?」とかも思いました。
で、読み終えましたが、結論からいえばスペースオペラではないですね。もっとハードな奴でした。でもすっごく面白い。生物学系のSFだ。私が個人的に読むSFの八割以上は神林長平で、神林長平は工学系のSFの旗手なので、すごく新鮮でした。
内容について触れていきます。神とは何か、という問題に対する、少なくとも私が知っている限りでは類を見ない、理知的で冷徹な、メスを入れていくかのような精緻なアプローチ。斬新でした。
そして、単に「SFとして優れている」だけではなく、小説としてもちゃんと温もりがあり、人の愛があり、文芸として優れている。ほとんど完璧に近い作品だと思います。