明けない夜はない。

「読んで良かった」―読了後、素直にそう思えるお話です。

貴族・クリム家の三姉妹の次女、ハリエッタは失意の中にあった。彼女の夢は王都で正騎士となることであったが、父であるグスタフ・クリムの事業の失敗により、一家は王都を遠く離れた小さな田舎の所領へと引っ越しを余儀なくされていた。そこで彼女と家族を待ち受けていた出来事とは―。

お話は完結しており、コンパクトなボリュームにもかかわらず、ホラー、ファンタジー、剣での戦闘、そして最後はちょっぴりミステリー風味の謎の解明と盛沢山です。しかし決して詰め込み過ぎというわけでもありません。語られるべきは語られ、不思議なままでもよいことは不思議なままに。これは作者様の文章力と構成の巧みさ故だと思います。
特に、主人公としてスポットが当たっているのは次女ハリエッタであるのに、なぜタイトルは『グスタフ・クリムの帰郷』なのかという、おそらく読者が途中で絶対に気になること……こちらについても私は最後まで読んだ時に「ストン!」と腑に落ちました。
最近流行りの「ざまぁ」とはまた違った意味でとてもスッキリ☆☆☆

優しい朝日を感じさせるような爽やかで温かいラストに、本当に「読んで良かった」と思いました。

最近のweb小説には珍しく、きっちりと行間の詰まった文章ですが、とても読みやすくストレスを感じません。ファンタジーを読む楽しみを思い出させてくれる、そんな作品です。