我々の生きる日本で、静かに紡がれるホテルマンとRの交流。

転生もせずチートもざまぁも能力バトルもなく、悪い敵を倒してめでたしめでたしでもない。ジャンルとしては文芸でしょうか、フィクションとはいえ我々の生きる現実世界の日本を舞台に、繊細で美しい文章で紡がれる、静かな二人の交流のお話です。ファッションホテルを舞台にしていることもあり、大人向けの表現もそれなりにあります。

我々の記憶にも、程度の差はあれどおそらくは大きく刻まれているであろうある出来事を背景に、リアリティをもって描かれる独特の世界観に引き込まれて一気に読んでしまいました。


正直難しい題材・テーマではあると思いますが、それに正面から向き合って書き上げられたのだなと感じました。こう言っては身も蓋もないかもしれませんが、Web小説でアクセスを稼げるタイプの、バズる話とはかなり毛色が違います。それでも書ききったその覚悟に、伝えたかったであろう想いに、とても心を打たれました。

理不尽と隣合わせのこの世界で、それでもなんとか平和な生活を送れている自分にできることはなんなのか。そんなことを考えさせられます。

完結作でそこまで長すぎず、割とすぐに読めるかと思います。よくあるWeb小説とは少し違った雰囲気の作品が読みたい方はぜひ。

とても良いものを読ませていただきました、書き手としての自分にも、まだまだ頑張れることはあると、背筋が伸びる気分になりました。ありがとうございました。

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