小説を書く時にどうしても我々は「ウケ」を考え過ぎて、ピーキーな表現や大胆な仕掛け、そして特異なキャラを想像してしまいます。それが悪い訳ではないけど、激辛ドーピングましましな物語に辟易した方に、この小説をおすすめ致します。
この作品は派手な演出を良い意味でないがしろにして、「あざやかな普通」を抽出しています。
どういう事かと言えば、異世界ファンタジーでは決して味わう事の出来ない「日常の解体」がこの作品では行われているのです。
私達が何気なく通り過ぎてしまう場所や時間を、誠実に、丁寧に、そして少しだけ葛藤し、その日常に潜む「普通」を逆説的にあぶり出し、私達に改めて提示するのです。
淡々と書かれる言葉の一つ一つが、誰もが想い、誰もが感じる、そんな当たり前なの事を改めて自覚させてくれる、そういう素晴らしさに満ち溢れています。
無意識に流してしまう「人生の大切な日常」、世界には当たり前に獲得出来る普通の幸せが、こんなにも満ちています。
客観的にみれば、自分の思い込みで人生を台無しにしている人間が多く存在する現在。どうか、自分が本来獲得出来る「普通の幸せ」を思い出してみてはいかがでしょうか。
私はこの小説を読み、淡々とした至福の時間を味わいました。
是非皆さんにも、味わって頂きたく書いてます。宜しくお願い致します。