距離は遠く、だけど音は確かに響いている

 人間は理解できる。寄り添うことができる。話し合い、お互いを知ることができる。

 だけど確実に距離は存在する。それは埋めることができず、それは感じることしかできない。

 磯辺と言う男性の視点から見る「R」という女子高生との距離。それはホテルの受付と客と言う関係性であり、そこから気送管ポストを通して会話をするようになる。二人はお互いの事を知り……そして一五一四キロメートル以上の距離を知る。

 あの震災は遠い過去。あの震災は心の傷。一万五千人と言う数と、命。
 あの日、対岸の火事だった磯部と、自分の70%を失った「R」。そんな、距離。

 そんな二人を繋ぐ、シュルシュルーという音。 
 海のシンバルは、今も――

 

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