武蔵野の名水を満喫し心優しい巨人のアートを堪能する そんな贅沢な一時を

 こちらの作品を読んで、私は初めてサンドアートを知りました。
 下からライトアップした透明な板の上に砂を撒き、手や筆などを使って、砂を寄せたり広げたりしながら濃淡をつけて描き上げていく技法。
 まるで砂遊びをするように、何度でも作り直し姿を変えることができる変幻自在なアート。
 その一方で、そのままの形を保ち続けるのは難しい刹那のアートであり、光と影が織りなす幻想的な雰囲気をも湛えています。

 描いては崩し、描いては崩し、主人公の手から生み出される武蔵野の自然は、鮮やかな映像のように私の胸に迫ってきました。
 滾々と湧き出る水は、やがて勢いを増し形を変えて流れゆき、大地を形作っていきます。人間をも含めた多くの生命を育む川の流れ、季節の移ろい。
 太古の昔、伝説の巨人がこの地を作り上げた姿を垣間見れたような感動です。
 
 柔らかく語られる少年の頃の思い出は、ノスタルジックな記憶を呼び起こし、美しい筆致が誘うマイナスイオンは一服の清涼剤となって、みなさんの心を癒してくれることでしょう。

 心地よい高揚感と清々しさ、どちらも実感してみてください。

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