The conclurion, and it's his TBH.
吸い込まれるくらいに、空が青い。
目を見開いていられないほどに眩しい日差しは、地下に篭りっぱなしで生っ白いあたしの肌には、毒でしかない。
それでもいい意味で、あたしの胸は高く波打っている。
ジャムパークのステージの上。
緊張は、まあ、してる。
でもそれ以上の高揚が、胸を満たしてる。
いい状態だ。
多分リンタロウくんもカズくんも、一緒だ。表情でそれは分かる。
ただ1人ゲバラだけは、どこか思い詰めてる。それも表情で、分かってしまう。
この後に及んでなんなんだ。あたしたちをここに引っ張ってきたのはゲバラなのに、今更何を、思い詰めてんだ。
「今更ビビってんなって。らしくない」
歩み寄って、軽くゲバラのケツを蹴る。
「莉奈、俺」
一瞬口籠もってから、ゲバラはあたしに向き直る。
「俺、莉奈が好きだ」
その言葉は、最初は意味を伴わない、音の輪郭だけであたしの耳の奥で溶けて、それがじわりと脳みそに染みてきた時に、ようやくその意味が、ぽわりと浮き上がってくる。
「なんだよ、それ」
ホントに、なんだよ、それ、だ。
今このタイミングで、ホントになんなんだ。
「自分でもよくわかんねえけど、急にそう伝えたくなった」
そんな無責任なことをのたまうゲバラの顔からは、さっきまでの思い詰めた表情が消えていた。
1人だけですっきりとした、満面の笑み。
あたしの胸の中に一瞬で熱が溜まり、容赦なくそれは弾ける。
目が熱い。視界がぼやける。
やっぱりだ。ゲバラはどこかおかしい。本番前のこのタイミングでそれを言って、どうなっちゃうと思ってんだ。
まったく、こいつは。
踵を返し、マイスタンドの前に立つと、あたしは胸のうちに燻った言葉を、思い切りグリルボールにぶつけた。
「バカヤロー!」
同時に、めちゃくちゃに、ジャガーを掻き鳴らす。
開演と勘違いしたオーディエンスが、勝手に歓声を上げる。
あたしは構わず、ジャガーを鳴らし続ける。
不秩序なノイズが、空に溶けてく。
そしてノイズは空に溶けてく 北溜 @northpoint
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