罪と罰を携えて、引き継がれる愛は伝わるのか。

誤解を恐れずに言うならば、とても難しい物語だ。

それは、物語が難解だという意味ではない。
むしろ物語の構成は丁寧で簡潔で、わかりやすく読者の手元にそれを届けてくれている。

読んでいて辛く苦しくなるのは、ジーンという一人の男が背負った人生の罪と罰が「妥当であるのかどうか」という点である。


彼は確かに罪を犯した。
しかしそれは彼の望んだことだろうか。
いや違う。
彼は、抗いがたい社会の波に吞み込まれて、図らずも罪を犯したのだ。
そして、その結果としての罰を受けた。


僕の胸は痛む。
彼はそれ程までに人々に、愛する娘に憎まれ恨まれ蔑まれなくてはならなかったのかと。そして僕は――そうは思いたくないのだ。

苦しい物語だ。
それ程までに、彼に感情移入して、涙している僕がいる。

いつか、彼の柔く、弱く、しかし善良な魂が娘アイリーンに届く事を願う。

ひたすら、願っている。

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