名状しがたい傑作

今をときめく異世界転生に比べ、伝奇モノというジャンルにはある種の圧倒的なアドバンテージがある。

それは何かというと、私たちが生きてきた現実世界での歴史上でこれまで培われてきた神話・怪談・妖怪・呪術etcのオカルト要素という凄まじい埋蔵量を誇るデータベースを物語として利用できる。
という点です。

それはファンタジー世界の空想と比べても負けないどころか、強固なイメージを読者に想起させる。

しかもそういった伝奇という要素に、思わず酒が欲しくなるグルメ語りを合体させて、しかも軽妙な語り口調と多彩なキャラクター群が織りなす本作は、これはもう傑作としか表現しようがない。
ないったらないのです。

特に本作6章における『トミーおじさんの大召喚物語』に関しては、伝奇小説の仄暗いイメージを背中側に持ちつつも、フーテンのおじさんの青春コメディという無茶苦茶な成立を成してしまってるのだから、爆笑しつつも感動してしまうという、どんな顔で読めばいいのかわかんない凄い仕上がりになっています。

星が付けたりないと思います。

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