葦名律は、ただ普通に高校生活を送りたかっただけだ。
誰にでも優しく、頼まれごとは断れない。
だが、ある日耳にした奇妙な短歌が、彼の平穏を破ることになる。
頭上から矢が降り注ぐ君の上
めがけて飛んだボールが救う
その直後、葦名の頭上に何かが落ちてくる。
偶然のはずの出来事が、まるで短歌通りに起こったのだ。
短歌を詠んだのは、神代結歌という同級生だった。
やがて、神代は葦名にこう告げる。
「葦名君が聞きたかったことを教えます」
神代がひた隠しにしていたこと。
それは『ある決まった方法で短歌を詠むと、歌の内容が現実になる』というものだった――。
運命の短歌が心を照らし出す。
不思議な世界、ここに開幕。
物静かではあるもの、心のうちにしっかりとした筋が通った少年が、不思議な力を持つ少女と交流を持つ。
題名にもなっている「神様と約束する方法」が、まさにキーワードとなります。
神のごとき力を授かった少女の苦悩、そこに巻き込まれた少年の運命は……。
複雑な人間模様が見事に描かれており、私の予想を遙かに越えた展開にびっくりです。
能力の効力が出るまでにかかる時間や緊迫した状況での打ち消しの難しさなどが、話に深みを増しています。
これは神の助けよりも、人の助けが人を救う物語なのか……。幸せとは何か、色々と考えさせられる作品です。