幸せと不幸のバランスは保たれている。
そんな考え方があります。
何かを得る為に何かを失う。
本質的に世の中は等価交換なのだと思います。
本作でも、それをテーマにしています。
誰かの幸せを願い、報いを受ける。
それを不思議な力として表現していますが、ひょっとしたら我々もそのシステムの上で生活しているのかもしれません。
ただ、幸せとはなんだろう。
我々に訪れるものは事象でしかありません。
それを、どう捉えるかによって事象の価値が変わるのだと思います。
あなたにとって、幸せを願う誰かがいて、そこにかける祈りは苦痛ですか?
費やす労力は「不幸」ですか?
無償の愛なんて存在しない。
だって、誰かを想う時、きっと自分も報われているはずだから。
読みやすい文体で淡々と紡がれる話には過不足なくしっかりとした描写が入る。目に映る光景、行動、そして心情。そこには様々な人間ドラマがあり後悔と葛藤がある。その(読者の何だろう?どう思っているのだろう?)をキチンと描き、没入感を提示してくれている。ここまで読者を思って丁寧に作られている作品は少ないと思う。
人の死を扱う描写があるが苦しくなく、どこか開放的にも感じる。死にゆく当人の苦労や苦悩を知っていてもなお、心から「お疲れ様、どうか安らかに」と思えてしまうのは、作者の登場人物に対する思い入れがしっかりと頭に定着しているからではないだろうか。それは登場人物のセリフ一語一語をとっても言える。この人の、このセリフ。ピッタリとあった癖のあるしゃべり口は説明以上に体を表している。
どこまでも現実を追求した現代ファンタジー小説。寒々とした今宵には特におススメです。心の温かな朝を迎えるため、どうぞお手に取って読んでみてください。
(『第一章 親父の背中:鈴木祐也』まで読んでのレビューです)
私は滅多に泣かないんですが……感動して泣きました。
多くの人の心に訴える名作だと思います。
アイディアがおもしろい作品ではあるのですが、アイディア負けせず、人物描写がとにかく素晴らしい。
さえない親父の描写がほんとにさえなくて、その人間臭さが絶妙です。
各話の区切りや話の展開もスピーディーで、でも必要な描写は過不足なく、淡々としているのに深いところまで描かれています。
ここが作者様の非凡なところだと思います。人間観察力。
そして作品を支えるのは、何気ない部分のリアリティ溢れる描写だと思います。
多角的な視点を用いているところもいい。
ありきたりの感動ものかと思いきや、物語は最初から最後まで、見事な展開と素晴らしい人物描写でつながっていきます。
本当に素晴らしいと思いました。
おすすめです!!
泣きました。
結構序盤から涙腺がやばかったのですが、27〜30話が特にぶっ刺さってボロ泣きしました。
ネット小説としてこの作品も良いと思うのですが、是非この作品を劇場で見てみたくなりました。劇場という邪魔が一切入らずに物語にどっぷりと集中できる場所で私はこの物語で泣きたくなりました。
ギミック的に役者さんや美術さんの技を堪能できそうですしね。
良くも悪くも現実味のある年齢高めの登場人物達や人との付き合いの難しさ等重いところもありつつも、「当然になって見落としがちの優しさ」に気付かされる寓話的なストーリーとファンタジックな設定と軽めの文体で読みやすかったです。
まさに、タグにあるような「万人向け」の作品ですね。
ですが、私はあえてこの作品の重い要素を尖らせた内容かつ重めな文体で「大人向け」に特化した話を読んでみたくなってしまいました。
作者さんはそのような話はもう書かれているのでしょうか? 落ち着いた頃に探してみようと思いました。
幸せを与える。そこから思い浮かんだのは童話の『幸福な王子』と映画の『ペイフォワード』でした。どちらとも違いますが、これらが好きなら間違いなく刺さります。保証します。
さて、このお話は愛嬌が取り柄の秀明と『幸せを切り売りする日記帳』を中心にして様々な人の運命が絡み合っています。
秀明の死からはじまり、彼の秘密に触れた秀明の子の心境の変化が丁寧に描かれています。
まるで自分が体験しているのかのように思えるほどのリアリティは必見。
物語はそれだけにとどまらず、秀明の妻、秀明に寄り添っていた白い猫、日記帳を与えた存在にまで派生し、彼らの後悔も浮き彫りになる。苦しみを越えたところに何があるのかは、どうぞ自分の目で確かめてください。
第1章は、主人公の祐也の父が亡くなったところからスタートします。明かされていく亡き父の死の理由、それは、父が若い頃にした「ある選択」と大きく関係していました。真相の全てを知った祐也はーー。
第1章の主人公「祐也」、第2章のヒロイン「みさき」。深い関係は無いように思われた彼らの人生の線が、ある地点で交錯し、未来へ繋がっていきます。
それぞれの章を最後まで読み切れば、感動すること間違いなしです。
また、第3章では、本編の内容が別視点から掘り下げられており、大変読み応えがあります。
家族愛の物語を求めている方、是非お読みください。
もし、あなたが「自分の幸せを切り売りする力」を得たとしたら、どうしますか?
その「力」を、どう使いますか?
これは、そんな「力」を持った男性と、その家族の物語です。
ある一人の父親が亡くなったところから、この物語は始まります。
父親がしまいこんでいた物を、彼の妻と息子が開封することから、父親がもっていたある秘密が、回想とともに明らかになっていきます。
「力」を持っていた父親は、決して特別な人ではありませんでした。
むしろ、何処にでもいそうなおじさん。
しかし、彼がどんなに愛にあふれた人間であったかを、死後、妻と息子は知ることになります。
この父親がどんな風に「力」を使ったのか、その結果がどうなったのか、どうぞ、御自身でお読みになって確めてみてください。
そして、温かな感動に包まれてください。
最初に言っておきますが、これ本当にツラいです。
おそらく、大切な親族が亡くなった人ととか、読めないと思います。ツラすぎて。
斯く言う僕も、途中で投げ出したくなりました(笑)、それも何度も。
相当に耐性が必要です、ツラい話に対しての。
だけど、読ませるんですよ。
先が気になってドンドン読んでしまうんですね、大したもんだと思います、この筆力は。
あまり書くとネタバレになってしまうので書けないんですが、
後半部は本当にいい話です。
前半部を耐え抜けた人にとっては、ご褒美と言ってもいいくらいの。
マジで読む人を選ぶ作品だとは思うんですが、
ヒューマンドラマ中編としては、かなりのクオリティですよ。
泣けます。マジで。