秒で終わった魔王退治、俺は現代ダンジョンで無双する?
よねちょ
第一話 異世界行って2分で帰還
何を言っているの分からないと思うけど、酒のんでふわふわしてる思考の中で、気付いたら本当に浮いてた、さらにトーガのような服を着た美女が目の前に浮かんでいる。
「ここは次元の狭間で私はその管理人です。あなたは地球より異世界ラルスヘダーに呼ばれ転移させられます。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「はあ、わけがわかんないんですが、とりあえず1本いきます?」
俺は近所のスーパーで追加の酒を買って帰る途中だった気がするけど、どこなんだろうここ、酔ってんのかな?──うん、酔ってたわ、はっはっはっ。
「いただきます。地球の娯楽はとても貴重なのでありがたく思います。──おっと、もう時間ですね、ここ次元の狭間はあなたとは、時間の流れが違います。次あった時は数分後の私か百年後の私かもしれません。ですが、あなたが無事地球に戻れるよう祈っております」
「おーまじかー俺も異世界転移者かー」
こりゃ夢見てんなぁ、酔ってどっかで寝たかな? 俺。
ぐわんぐわんゆれてるしー。
そうしてたらいきなり目の前が開けた途端、いろいろな色が光って、ド派手に眩しい。
そして、ちょっとした浮遊感のあとドンと着地した。
「ぷぎゅる」
「んあ、なんかふんだ?ってここどこだ?公園?」
周りというか地面も木っぽいのでいっぱいだ。
あれ?目の前でチカチカ光ってる苗木っぽいのがあるなぁ。
うーん、なんか語りかけてきてる?ありがとう?
「いやいや、どういたしまして、ってなにが?」
またド派手な光が走り、よく見ると光はなんか人の形の何かで周りに集まってた。なんだか、みんな嬉しそうに光ってるよ。
エレクトリカルパレードかな?
だったらこれだ。
「飲みます?」
うなずいたような波動を感じたので千切れそうなビニール袋の中から6本セットの500mlビールを取り出して地面? に置く。
俺のビールは壱百八本まであるぞ。ないけど。
そんなんビニール袋に入れて持てるの、酒待ってる友人くらいだわ。
馬鹿なことを考えてたら周りが騒がしくなってきた。
「うわ、なんか周りバチバチいってる」
俺がバチバチしているのを苗木くんが見て……見て?
またチカチカしてる、えっと?さようなら?
「うんうん、さようなら、なんかよくわからんけど」
そうしてまた頭がぐわんぐわん揺れ始めた。うおーまわるぞー。
「ゲッフ」
「あ……ただいま帰りました?」
美人さんがテレビを見つつ、ストロング缶飲みながらゲップしてた。
「──おかえりなさいませ。あなたは何も聞かなかった、いいですね?」
「……はい」
「よろしい。改めまして、おかえりなさいませ」
「はい」
「あなたがここに戻ったということは召喚者の願いを叶えたということですね。この狭間からではわかりませんが、あなたがとても長い時間を掛けてようやく戻れたということはわかります」
「いえ、1、2分くらいじゃなかったかなと」
さすが夢なだけあって展開が唐突かつ適当すぎる。
「……慣れない世界のため心を壊す方もいます。その手に持った地球の品を大切に保管して心をつなぎとめていたんですね」
「いえ、ずっと持ってたんですけど」
「ですが、あなたはもう地球に戻れるのです。その思い出はここに捨てて、新しい気分で戻ってください。ひっく」
「あ、これ酔ってるし、酒飲みたいだけだな」
これがストロング缶の恐怖!!なんてな。
まあいい、酒飲みは友達、酒盛りは人生。そして俺はほしければくれてやるの精神でいつも酒盛りをしてる。
「じゃあこれ全部あげますよ?どうぞどうぞ」
「貴方は素晴らしい人です。ひっく」
美人さんはプシュッと缶を開けて飲みに入った。
「では俺はこれで……って、どうやって戻ればいいんですか? 」
「あ、忘れてました。貴方は世界を救いその功績により褒美が与えられます。詳しくは世界を救ったという運命力によって願いが叶います」
「なんだっていいんですか?」
「いえ、貴方が得するような運命を引き寄せることが出来るだけです。具体的に言えば宝くじ買えばあたります。基本は金で解決です」
「身もふたもないなぁ。──じゃあ、俺この番号選ぶやつ買ってるんで、これ当ててくださいよ」
そう言ってスマホを出して買った番号を見せる。
「いいでしょう。まあ、私がやるわけではないんですが、今貴方が口に出して願いましたので、なんかこう良い感じになって当たるらしいですよ?」
「はぁ、ありがとうございます?」
「では、時間です。それと、申し訳ないですが貴方がこれまでの経験で得た魔力のエネルギーは、地球の経験値とはまた違い、ラルスヘダーの独自のエネルギーになりますので、すべて回収されます。ちなみに持って戻ると地球との拒絶反応で爆発して死にます。なので回収し、貴方は以前のなにもない状態に戻りますので、お気をつけください。ただ、貴方の体や心に刻まれた思い出や経験は回収されません。大事になさってください」
「何も得てないんだよなぁ」
またまたぐわんぐわんと景色が周り、喧騒が戻ってきた。
再びの軽い浮遊感のあとドンと足をついた。
「ぷぎゅる」
「うぇ、またかよ」
夢だか現実だかわからないけど、とにかく嫌な感触が二回もあったので流石に気持ち悪くなって地面に擦り付けた。どうやら芋虫を踏んでたみたいだ……すまん芋虫くん無駄な殺生をしてしまった。
「って、スーパー前かぁ。たったまま寝ちゃってた? あれ?買ったもの持ってない。現実だった?」
まさかなぁ、あんなわけがわかんない異世界転移なんてあるわけ無いじゃん。
買う前に夢見て、買った夢でも見たんだろうと少しの混乱のあとそう結論付けた。とっとと買って帰ってから今か今かと酒を待っているであろう友人にこの夢の話してやろう。
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