力は不幸せの前に立つか後に立つか?

 面白かった。
 二つ目に提示されるテーゼは「転生」「主人公最強」「チート」「最強の仲間」「わんこ」とパーフェクト。だが一つ目のテーゼが、単純な貴種流離譚やサクセスストーリーにはならないことを物語る。
 夢見る異世界たちが少しばかり正気に返れば、このように不幸せで悲しくも愛らしい主人公が活写されるのだ。
 それを彩る世界は厳しいが道理が通っており、主人公に艱難辛苦は寄せるが読解を妨げる理不尽や無闇に物語を乱す複雑な伏線はない。
 そして筆者の描写には嫌らしいところが何一つなく、この挑戦的な野心作をそつなく書き上げている。
読みやすさは十分で、それこそハードカバーで商業化してもおかしくない。果たして向かう先はどこなのか、完結に期待する。

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