人里離れた山奥で繰り広げられる猟奇的介護……その目的が切ない

連載開始直後から、ずっとリアルタイムで拝読していました。
「これ、レビュー書きたい!」と思った矢先のカクヨム公式様レビュー投下で話題になり、
「ちょ……、公式様レビューの後に何を書けと !? 」
と、レビューの出鼻を挫かれた、個人的にも非常に思い出深い一作です(笑)

主人公、茜ちゃんの抱える「社会人として」、
そして「産めなかった母として」の挫折から始まる序盤から引き込まれました。

再就職先での面接という、ごく普通であるはずの場面からとにかく不穏な雰囲気が漂い、無事に採用が決まったはずなのに素直に喜べない不気味さが行間から滲み出てくるのは、まさしくサスペンスホラー。

そして、新しい職場はスマホの電波すら入らない人里離れた山奥で、
常駐するスタッフが二人しかいない広大な敷地を持つ介護施設。
三人目として加わった茜ちゃんは、その瞬間から施設(お屋敷)と介護対象者の異常性に戦慄します。

物語の序盤から中盤にかけては、もどかしいくらいゆっくりと進行していきます。
それこそ絶叫系マシンが徐々に高度を上げていく感じで、じわじわと読み手の恐怖を煽ってきます。

そして、中盤からは一話読み進むごとに明かされていく事実が、
とにかくエグい(褒め言葉)。
サスペンスホラーにパニック要素がふんだんに盛り込まれ、
読み進めるごとに確実にボディブローが効いてきます(褒め言葉)。

元々ホラーが苦手な人には、少々ショッキングな描写が続きますが、
それがホラーの醍醐味です。はい。
グロテスクはホラーの様式美です。

後半から終盤にかけては、まさしく絶叫系マシンに乗っている気分になる急展開に次ぐ急展開で、これでもか!とたたみかけてきます。
ここにきて、序盤から何気なく仕込まれていた伏線の多さに慄きました。
そして、一つ一つの回収(謎解き)の仕方が、またエグい(褒め言葉)。

真っ当な神経をしていたら「絶対にできない」こと……が、
この施設では「介護」と銘打って行われていた。

けれど、これは決して「犯罪とは言えない」という矛盾が、
余計に茜ちゃん(と読者)を苦しめます。

人里離れた電波も届かないような山奥で繰り広げられていた「介護」は、
茜ちゃんの視点からは、元医療従事者としても、人としても、
決して「容認できないもの」だけれど、
施設運営者にとっては文字通り「死活問題」という、
お互いに相容れない事情と思惑が複雑に絡まっているもどかしさが何とも……。

悪人のいない悪事、とでも言えばいいのでしょうか。

ただただ恐怖を煽るホラーではなく、読む人によって感じる悲喜交々、
「何が正解かは誰にも分からないが、生きるためには選択しなければならない」という極限状態を擬似体験できる秀作だと思います。

まだまだ語りたいけど、それでなくても長文なので、
この辺りで自粛しておきます。

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