ガイコツがお墓から這い出すところから始まって、ホラーかな!?とビックリさせられますが、やがてそのガイコツがちっとも怖い存在でなく、ただホカホカになりたいだけなのだとわかります。
どうもホカホカにならないとお墓に帰れないようで……。
怪しむ人間の気持ちもわかる。でも、ホカホカになりたいガイコツの気持ちもわかる(ような気がする)。
登場する人間たちの反応は身につまされます。異質なものを受け入れられないその心性は、決して物語の中の人物のものではなく、現実に生きる私たちの中にあるものです。
ガイコツはやがて、人間たちの世界を出て行って、そして……。
ラストは純粋で温かです。
物語が終わりを迎えた時にはガイコツだけでなく、読者の気持ちまでホカホカになっていることでしょう。
寒い冬の晩に、ヒトのやさしさを求めて彷徨うガイコツの儚くも切ない一夜話です。
リズミカルかつ柔らかい文章で紡がれる、渡る世間は鬼のような人間ばかり(言い過ぎ)というシニカルなギャップが心地よく、作品で描写される寒さが骨身に染みるようです。
とはいえ、作中に登場する人間さんたちが悪いわけではないのです。
夜中に戸口にガイコツが来たら、普通はこういう反応をするはずなので、何も悪くないのです。
だけど、ガイコツも悪いわけじゃない。
ただ、自分の墓に戻りたいだけで、そのために体を温めたいだけ。
だけど、そのささやかな願いが叶わない理不尽さが、どこまでも穏やかに紡がれていきます。
この作品は、我欲や恐怖や利己(自分ファースト)といった概念は血肉ある人間の持ち物であって、ホネしか持たないガイコツはそれらを既に手放し、最後まで持っていたはずの土(安らかな眠り)への執着すら手放して、最後にキラキラと輝く存在として描かれています。
最後まで読み進めて、ホネ以外の一切を削ぎ落としてしまったからこそ、ガイコツに残っていたのは、本当に純粋な人間のコアの部分だったのだろうと思えるのです。
我が家を訪れてくれたら、全力でおもてなししたのに……と思うほど、ピュアなガイコツに癒されます。
それくらい、優しい余韻の良作です。
ガイコツには、朝までに、ほかほかにしてもらわないといけないわけがありました。
けれども、ガイコツという理由でそれがかないません。
そんなとき出会ったキツネの親子。
彼らとの出会いが、ガイコツにとっては、「ほかほか」のものになります。
さて……
児童文学って、どこまで子どもに寄せて書けば良いのかが、私にとってはとても難しいのですが、この作品は、子どもたちが手にとっても簡単にリズミカルに読めて、ガイコツに心を添わせられる、とてもハートフルで素敵な物語だと思いました。
「ほかほかになる」というフレーズも優しくて好きです。
子どもだけでなく、大人も読んでみて貰いたいお話です。
墓場から這い出すガイコツ……。
ホラー苦手な私はその始まりから引いてしまったのですが、タイトルの「ほかほか」通り、恐ろしげな物語ではありませんかでした。
ある願いから民家を巡り、中に入れて欲しい、ほかほかにして欲しいと願うガイコツ。
しかし、当然のことながら、突然訪ねてきたガイコツを人々は中に招き入れることはありません。
やっぱりガイコツがほかほかになることは諦めるしかないのかな…そんな切なさの中、出会ったある動物と、彼は短い時間を過ごすのです。
その時間は、彼が求めていたものとは別の温かさを与えてくれます。
ほんの小さなきっかけだけれど、自分次第で、求めるものは他の場所に、他の形でも存在するのだと気付ける物語。
童話風で読みやすく、大人だけでなく、子供にもぜひ読んで欲しいと思います。
読み聞かせにも良さそうです。
お勧め致します。
童話的な世界観の、とてもあたたかな気持ちになれる作品でした。
ガイコツが、ある冬の日に家々を回る。「ホカホカにしてほしいのです」とお願いする。
しかし、人々は冷淡な対応をする。「ガイコツなんか家に入れたくない」と。
まあ、「ですよね~」という感じではあります。でも、このガイコツさんはとっても優しい奴なのです。
せめてもの、という形で布きれやパンや干し肉をもらうガイコツさん。
そんなガイコツさんが、その先で遭遇したものは……。
優しさ、温かさ、という言葉について改めて感じさせられる、優しい目線で綴られた物語でした。
読んだ人の心があたたかくなる、とても素敵な作品です。