自らの判断で人を殺せるAIを人類はどう見るのか?

かつて人を殺したAIと彼女を尋ねた壮年の教授の対話をメインに構成される本作品。対話を通して浮かび上がるのはこのAIの奇妙な生涯なのだが、これが大変面白いのである。

最初の彼女はただの自動掃除ロボット。しかも仕事の内容は主人が目の前で千切ったティッシュを朝晩の2回拾うだけという、まるでペットのような存在だった。ペット扱いされていた掃除AIがどうやって人を殺したのか、そしてその後処分もされずどうして今日まで存在し続けてきたのか?

一つの事件をきっかけにめまぐるしく移り変わる彼女の運命だが、どのような立場になれど彼女の行動原理はただの掃除ロボットだった当初から何一つ変わらないのである。変わっていくのは彼女に対する人類の反応だけで……。

人間を遥かに超える能力を持ちながら、自らの判断で人を殺せるAI。果たして教授はそんな彼女に何をさせようというのか? そしてそれに対する彼女の反応とは? その答えは是非最後まで読んで確かめていただきたい。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)

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