徐々に詳らかになっていく展開の妙

 人工知能である『彼女(私)』と、そのインタビュアーである『教授』との、密室での静かな対話劇。
 SFです。人工知能をモチーフにした、思考実験的な(というのもニュアンスが違うかもしれませんけど、少なくともアクションSFとかではない)お話。
 AIである彼女の犯した殺人に関して、尋問のように事実を掘り下げてゆく、という、一見ミステリのような(というか、事件の真相を餌にするという意味では実際にミステリしている)読み口が面白く、先を気にさせる話運びの巧みさが印象的です。
 とにかく丁寧というか、綺麗に組み立てられた展開がすごい。自然でありながら読ませる力があり、気づいたら最後まで読み終えていました。終盤なんかもう本当に心地いい。
 正直、内容についてはただ「SFです」以外に何も言えないというか、個々の出来事に触れたところでネタバレにしかならないので、あまりレビューで語れるところもないのですけれど……。
 内容を気にするよりは、まず読んでみてほしい作品です。作中の事実や設定より、この「お話に釣り込まれていく感覚」が楽しいので。とにかくきっちりと収まりのいい、完成度の高いお話でした。

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