第9話
「
アルスが部屋から出て受付のあるホールへ向かうと、そこにはミリアの姿があった。アルスは適性試験で占星術師に言われた顛末をミリアに話すと、驚きよりも疑いの念を強く表した。
「お兄ちゃんがそんなすごいヤツには見えないんだけどなぁ。
「そんなことはない、と思うけど……」
正直、アルス自身も先程占星術師に言われたことを信じられずにいた。
「でも、この前の左腕の件もあるから何かしらの何かはあると思う」
「何かしらの何かって何よ……」
ミリアはこんらんした。
アルスとミリアは二人で受付に向かった。アルスは戦士、ミリアは魔法剣士として訓練を始めることとなった。
「魔法剣士ってなんだかすごそうだな」
「潜在魔力と剣術のポテンシャルが高いんだってさ。まぁ、私は天才だし?」
ミリアは昔から言われたことをなんでもこなす優秀な子どもとして周りの大人から可愛がられていた。力仕事も大人顔負けで、更には頭を使って効率化を図るなど、知能面でも以前から才能を発揮していた。
受付の女性から訓練の概要が説明される。
「訓練は翌日から開始されます。初日の訓練場所はこの建物内にある訓練場となりますが、以降の訓練場所は担当トレーナーとあなた達が相談して決めることになります。もちろん初日同様に訓練場を使っていただいても構いません。期間は担当トレーナーが合格と認めるまでです。何か質問はありますか?」
ミリアが手を上げる。
「訓練中に王都から外に出ることは可能ですか」
「基本的にはお断りしておりますが、訓練に必要とあれば許可しております」
要するに『訓練中であっても建前があれば自由に王都を出ても良い』という意味でもある。
「他には?」
二人は首を振る。
「では、明日から頑張ってくださいね」
二人は試験場を後にした。
宿へ戻る途中、これからのことについて考えるついでに昼飯を調達した。
「訓練、早く終わるといいけどなぁ」
「ミリアはすぐに終わるんじゃないか?」
「ま、私なら当然よね。お兄ちゃんこそ大丈夫? 一年とかかからないようにしてよ」
アルスの場合は戦士としての訓練と
「とりあえず今日は宿で休んで、明日から頑張ろう」
「そうね。ウルフはちゃんと番犬できたかな」
「また犬扱いして……」
そう言いながらアルスは部屋のドアを開けた。ベッドの下にはウルフと、側にもう一人いた。アルスにとっては見慣れた黒いローブ。短くうねった茶色の髪。
「やぁ、さっきぶりだねェ」
占星術師が、そこにいた。
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