第4話
アルスの左腕を包んでいた光が収まり、あたりは元の静寂に包まれた。
ただひとつ、アルスの左腕を除いて。
「お兄ちゃん、何、その腕」
「……俺が聞きたいんだが」
アルスの左腕は銀色の鱗に包まれており、手からは鋭い爪が伸びていた。柔らかい木材であれば荒っぽく切断できそうな威圧感があった。試しに指を動かすと、およそアルスの思う通りに動く。左腕を動かす度に夕日の光が赤く反射する。
あまりの出来事に戸惑いを隠せないアルスとミリアだが、この状況を飲み込めない存在がもうひとつあった。
「お前……
鱗のあまりの硬さに思わず口を離した狼は、あまりの出来事に人間への恨みを忘れてアルスに問いかけた。狼の目の前ではミリアが腰を抜かしたまま身動きが取れずにいた。
「俺はれっきとした人間だ!……多分」
「んな左腕の
アルスは今まで人間として育てられてきた。そして自身もそれを当然として今日この日まで生きてきた。しかし、当然ながら普通の人間から銀色の鱗や鋭い爪は生えてこない。
「まさか、
「え!?」
「しかし、それこそ絶滅してるはずだぜ。俺みたいな
「それはそうだが……んぉ!?」
困惑しきりのアルスが狼を見ようとしたが、声の先に狼はいなかった。代わりに190はあろう
「ん? あぁ、
「気にするなって言われても……」
先程まで狼だった大男はアルスとミリアに断ると、その場でアルスの左腕を掴み、ぶつぶつと独り言を始めた。
「ちょっ……と……」
勝手に独り言を始めた大男をよそに、少なくともミリアは平静を保てずにいた。何故なら……。
「服くらい着てよ!!」
狼が大男に変身してからというものの、ミリアの視界は大男の立派なモノで占められていた。
全裸だったからである。
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