荘厳で清らかな天使の梯子
一週間後—。
俺が最適化アルゴリズムのことでPC画面とにらめっこしているところにみのりからラインが届いた。
—期末の結果はまあまあだったけど、数学の苦手意識を克服したいので、大樹先輩がよかったら時々、家庭教師していただけないでしょうか?とにかく、自力で克服するのは無理だと思うので。お返事、お待ちしてます。
—みのり、頑固なところあるからな……。
そう思いつつ、俺は急いでラインに返信した。
—いいけど。ライン以外にもズームとかグーグルミートとか、ツールはいろいろあるし、週一で家庭教師でもする?
—えっ、ホント!?うれしい!!大樹先輩が良ければ図書館でも。あ、でもこの頃、コロナの感染者数、増えてるね。
—確かに。でもたまには図書館もいいかもね。その前に問題集を一緒に見に行こうか。
—はい!助かります!頼りにしてます!で、いつですか?
—みのりの夏休みは21日から?
—はい。
—じゃあ、夏休み初日の21日とか、どう?みのりは予定空いてる?始めるならできるだけ早めの方がいいからさ。
—コロナの影響もあるので、今のところ特に予定はないです。
—じゃあ、21日の11時に図書館で。細かなことは会った時に決めよう。
—21日の11時に図書館ですね。了解しました。よろしくお願いします!
—じゃ、作業中だから今日のところはこれで。
—はーい。作業、頑張ってくださいね。
思いがけない急展開に少し戸惑いつつ、久しぶりにみのりに会えると思うと俺はなんだか無性に嬉しくなった。その一方で、毎日報道されている新型コロナウイルスのニュースのことが急に気になった。
—それにしても新規感染者数、増えてるけど、ワクチン接種券はいつ届くんだろ?届いたら、さっさと予約しよっと。みのりにも速く届くといいけど。とにかく、21日にはお互い無事に会えるといいな。
そんなことを思いながら、窓辺に立ってふと空を見上げると雲間から太陽の光が放射して降り注ぎ、荘厳で清らかな天使の梯子が目に映った—。
—21日は無事に会えますように。
崇高で美しい空に向かって息を呑むような気持ちで俺はそっと祈った。
未来へのセレンディピティ 中澤京華 @endlessletter
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
世界を巡るシーン/中澤京華
★77 エッセイ・ノンフィクション 連載中 13話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます