パンデミックを越えた未来

 大樹から届いた写メを見つめながら、すっかり暗くなった夜空を見上げて、みのりは深々とため息をついた。


—こんな写真、いつか私にも撮れるかな……。


 中三になって受験勉強が忙しくなり塾に通うようになったみのりは図書館にも時折、足を運んでいた。それが、新型コロナウイルス感染症の影響が出始めるとともに外出自粛になり、塾もオンライン授業に切り換えられたため、オンライン授業を受けれるインターネット環境をまだ導入していなかったみのりは自宅学習を余儀無くされ、図書館も閉鎖されて行けなくなり、新型コロナウイルスの感染防止対策下での受験勉強に専念し、志望高に合格した。大樹とは一緒に初詣に行って以来、願掛け断ちで連絡を取り合っていなかったが、合格後、晴れて電話で合格を報告した。その後、春休み中に今後のためにもインターネット環境を整えることになり、大樹にも手伝ってもらって、その時に両親に大樹のことを先輩として紹介した。また、高校合格を機会に携帯スマホも持つようになり、大樹にアプリについても教えてもらい、導入したラインの連絡先も交換した。春休みが終わり、高三になった大樹は大学受験に突入し、みのりも高校生として新生活が始まり、それぞれが忙しくなったが、時々タイミングを見計らってオンラインで連絡を取り合い、長く続くコロナ禍の中、お互いを励まし合う関係が続いていた。コロナ禍が続く中、一緒に初詣に行き、大樹も志望大学に無事に進学。緊急事態宣言が続く春休みだったが、図書館は開館していたので、桜が綺麗な頃に一度だけ待ち合わせして以降、会う機会もないまま、もうすぐ夏休みが近づいていた。その一方で、六月末には減少傾向だった新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が増え始める中で、オリンピックを控えて日本国内全体がステイ・ホームを合言葉にして、閉塞感と緊張状態に包まれていた。オリンピックも無観客開催となり、学校でのイベントも制約を受け、コロナ禍の密を避ける空気はいつまで続くんだろうと不要不急の外出・移動自粛の生活が続く中で、新型コロナウイルスワクチン接種が医療関係者や高齢者から順次実施され、新型コロナウイルスの感染防止対策も引き続き呼びかけられていた。


 人類にとっての脅威でもあるパンデミックという状況下はグローバル化した国際社会に大きな影響を及ぼしている—。こんな状況下でどう生きていくか、生きていく目的さえも見失いそうな心境だけれど、こんな時代だからこそ希望を見出せる方向に自分の進路を定めていきたい—。


 文理選択では文系を選択したものの、国公立大学への進学をまだ諦めたわけではないんだから、苦手科目の数学も頑張らないと—と思いつつ、頭痛がしてくる—。


—こんな状況だし、やっぱり自分でなんとか克服しようっていうのが土台無理なんだから、せっかくオンラインに繋げるんだし、取り返しがつかなくなる前に理系の大樹先輩に教えてもらおうっと。だけど、大樹先輩、活動家だからな……。コロナ禍でも夏休みはもう何か始めようとしていたりして……。とにかく、期末の結果を報告する時にきちんとお願いしてみよう。


 そんなことを考えながら、期末試験から解放されたばかりのみのりはインターネットの画面を開くと、大樹のブログのページを覗き込んだり、大学のホームページをナビしたり、お気に入りのユーチューブを視聴したり、気になるニュースや話題をチェックして記事を読んだりしながら、パンデミックを越えた未来をぼんやりと思い描いていた。

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