企画レビュー「その絆は本物か?」


パーティーを組んでいる間は仲間に絶大な恩恵をもたらすが、そこから外れた途端に誰からも忘れ去られてしまう(初めから居なかったことにされる)という風変わりな呪いにさいなまされる武芸者の冒険譚。彼はこのままだと生涯を「縁の下の力持ち」で終えるわけだが、半ば諦観と共に運命を受け入れつつも平凡な幸せへの未練を捨てきれない所こそが主人公の大きな魅力と言えるでしょう。

どうせ忘れちまう俺なんかに、構わなくていいから。
でも、良い奴だったアイツ等が不幸になるのを放ってはおけない。
これが彼の行動原理であり、そこには大いなる矛盾をはらんでいるのですが。

これを突き詰めると「困った時にだけ颯爽と現れて、全てが終わった時には風のように立ち去っている」理想のヒーロー像が完成となるわけです。日本ゲーム業界の古参キャラクターにして高名なる冒険家アドル・クリスティンもまた冒険を生きがいとしており、戦いが終われば可愛いヒロインともすっぱり分かれて新天地を目指す孤高の生き方を一生貫いたのです。これこそある意味では男のロマンであり、美学の結晶であります。
されど、人は過去をまったく顧みず生きていけるほど強いのでしょうか?
その答えがこの作品にあります。
冒険の中でしか生きられないのではなく、そもそも冒険の外に「存在しえない」男の悲劇。
冒険を卒業し、生きる場所を見つけたかつての仲間たち。それを見て彼は何を思うのか。
これこそファンタジー界の「男はつらいよ」人間臭い主人公が好きであれば、是非。

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