エピローグ

「終わったな。……これからどうするんだ、アキハル?」


 夜明け前の港で煙草をふかしながら、ゴリラが尋ねてきた。

 その瞳には、初めて会ったときのような無垢イノセントが浮かんでいた。


「それなんだけど、お前ドラムやらね? ちょうどメンバー欠けてたトコだし」


「生憎だが、私には為すべきことがあるのでね。失われた森林の再生活動……何年かかるか分からないが、いつか必ず取り戻さなければいけない」


 彼は朝日デイ・ブレイクを背に、ゆっくりと歩き去っていった。


「短い間だったが、刺激的だったよ。またいつか共にサウンドを奏でよう」


「メランコリーだゼ」


 遠ざかるゴリラの背を見つめながら、また一人になっちまったな、と俺は思った。

 だが――どうせ人間は一人で生きて、一人で死ぬしかないのだ。

 だから今、この瞬間を全力で歌い続けていくしかない。

 それが俺の生き様トゥルーだ。


「これは聖戦である! 我らが救済メシア教師教導師マスター・オブ・グランドマスターを殺害した罪は重い!! 我々は決断的な意志をもって貴様らに報復する者である!!」


 なにやら騒がしい方向をみれば、ちょっと数えるのも億劫なほどヤバい数のメニー・メニー・メニー・メニー白い袈裟ホワイト・ドレスやら橙の袈裟オレンジ・ドレスたちが大挙していた。ゴリラは彼らを一人ずつ殴り殺し、一人、また一人と海に放り投げている。


 彼と視線が合い、俺は思わず微笑んでしまう。


「やれやれ」


 ギターケースから軽反動全自動掃射砲インスタント・ガトリングガンを取り出して、恭しくも荘厳な足取りムーンウォークで戦場へと一歩、踏みだす。


「メランコリーだゼ」


 どうやらこの俺が、そうアキハルが、アーティストとして本格的に活動する日は――どうやらまだ、遠い日の話になりそうだった。

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アキハル the legendary true poppa 神崎 ひなた @kannzakihinata

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