第6話 そんな、初デート

ゴールデンウィークの喧騒が落ち着いた頃、「チカ」こと「ちーちゃん」と初めて一緒にお茶をすることになった。

約束の時間のずいぶん前に待ち合わせ場所の某商業施設に着いてしまった。

見上げると、空はとても青く、まだしばらく梅雨の気配はなさそうだった。


さて、プライベートのちーちゃんはどんなだろうか。ちーちゃんは出会ったガールズバーでの雰囲気から考えると、プライベートでも「大人の女性」なんだろう。落ち着いていて、深淵な洞察で、セクシーで‥

一緒に歩くときにあまりにカジュアルで子供っぽい格好だと、ちーちゃんと不釣り合いだろうと思い、数日前から服装を試行錯誤していた。

結局、あたしにしては短い膝丈のやや透け感のある薄いグリーンのスカートに、白いフレンチスリーブのサマーニットを着た。が、やはり鏡の前でしばらく考え込み、薄手のベージュのジャケットを羽織った。サンダルも少しヒールの高いものにした。

服装に合わせると、自然にリップの色が濃くなった。


約束の時間をほんのちょっと過ぎたあたりで、ちーちゃんが、来た。

胸元で手を左右に振りながら近づいてくるちーちゃん。

会う時間帯の違いもあるだろうけど、ずいぶん近づいてきてやっと、ちーちゃんだと気づいた。

大きめのストローハットに白いシャツ、タイトな踝の見える丈のジーンズ、ローヒールのサンダル。スタイルが良くないと絶対似合わないファッションだなー。

メイクはすっぴんと見紛うほど薄い。

あたしの想像するちかちゃんはもっと肌見せ多めセクシー系だと思っていた。

でも、今日のファッションも大人な雰囲気に変わりはない。自分をわかっている感じだなー。

と思っていたんだけど、

「大人ですねえー、なんかお店に来た時と雰囲気違いますねぇ。」

ちーちゃんの話し方もお店のそれとはギャップがあった。

「チカさんも、大人ですよー。ちょっと意外でしたけど。」

「そう?お店とは雰囲気違いますか?」

「チカさんの違う面を見せて貰った感じですねぇ。」

急に黙るちーちゃん。

あれ、まずいこと言ったかな?

「‥いきなりこんなお願いってずうずうしいかもなんですけど‥」

「お願い、ですか?」

「はい」

「何ですか?」

「LINEで話してるときにも言おうと思ったんだけど」

「はい」

「ちーちゃんって呼んでもらえませんか?」

理由を聞くと、チカだとどうしても店の雰囲気を意識してしまうとのことだった。

「嬉しいです、ちーちゃんって呼ばせてもらえること。」

「じゃあ、昨日話したパフェ食べに行きましょー。」

ちーちゃん、楽しそうだなあ。

あたしも思いっきり楽しもう!

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