第2話 そんな、出会い

「今日は彼氏と?」

「んー、でも、彼は友達と話してる方が楽しいみたい」

つい、小さくため息が出る。

「そうなの。じゃあ、今晩はチカが恋人だね」

どきっ。一瞬心拍が大きくなる。

「チカさんは女の子が相手でも楽しいですか?」

「実はそっちの方が得意かも」

優しい笑顔だなあ、これは営業トークではなさそうだな‥

「ユキちゃんって、こういう場所苦手でしょ」

「わかります?俯瞰してれば大丈夫かなと思ったんですけどねえ」

「俯瞰、かー。」

「変ですかね?」

「ん?んー、変じゃないよ。ただ、やっぱり心はここに無いんだなーって思ったの」

「心が無いというか、この雰囲気に入り込みすぎると、ドキドキが止まらなくなりそうで」

「そうなんだ。こういう場所が苦手だから?それとも‥」

チカがニコッとして見つめてくる。

「女の子が大好きだから?」

「‥そうですね。何でわかるんですか?」

「あたしに似てるからかな。あ、名刺貰ってくれますか?」

チカがスッと胸から名刺を出す。

「あ、ありがとうございます」

「今度、お店じゃ無いところで話しましょ」

チカは他のお客さんのところへ移っていった。

太腿にまだチカの手の温かさが残っている。温もりが消えてしまうのが惜しくて、自分の手をそこに置いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る