初夏色ブルーノート

明子は喫茶店で仕事の段取りを考えながら
アイスコーヒーをひと口、ふくみます。
グロスのキャラメルフレーバーと混ざり合う苦みが呼び起こす記憶。
初恋の記憶。

子供がふざけあいながらも感じるエロティックに
似た演奏シーンもあるよ。

｢ジャズをやってみたいんだけど｣

音大生時代の二台ピアノ課題。
二つの手が、高音と低音が交替する度に入れ替わる。
中途半端な二重奏。けれど味がある。

私はあまり音楽に詳しくはありませんが、鍵盤の上で交差する二人の手の動きが、臨場感持って想像出来ました。
とあるシーンでは、思わずほっぺが熱くなります。

恋愛描写と音楽描写が交互し、甘さと苦さが交差する物語です。

自主企画【筆致は物語を超えるか【初夏色ブルーノート】】参加作品

同プロットから作者様がそれぞれの作品を紡ぐ自主企画における作品で、作者様本人が書いたキャッチコピーは「真摯に飾らず」

その言葉まさしくな一人の女性の一時を描いた作品でした。
直球に届く女性のまっすぐな生き様に惚れ惚れし、
様々な表現に作者様の腕が光り惚れ惚れする。

結局のところ、惚れたまま楽しく読む時間を提供していただきました。

　同じあらすじで別々の作者さんが物語を書く企画「筆致は物語を超えるか」に参加されている作品です。

　魅力的な物語が多い中、本作は「文字を読むと音が聞こえてくる」という稀有な物語。
　「音楽」に真摯に向き合った傑作であり、音楽の教養がないような私でも「あぁ、音楽っていいなぁ」と思える作品に仕上がっています。
　お話の中身もさることながら、随所に光る表現が美しく、ゆえにこの物語が綺麗な音に包まれていると思うのです。

　さて、どんな音が聞こえてくるのか？
　それはぜひあなたの耳で、お確かめ下さい。オススメの一作です！