お兄ちゃんと妹が異世界を突き進む、ファンタジーコメディ!

社会人の『神崎八尋』と14歳の妹『陽菜子』、そして陽菜子の家庭教師を務める少年『和泉伊織』は幼馴染。いつも通りの日常を過ごしていた三人だったが、謎の少女に渡されたゲーム機のような箱を起動すると、異世界へと転移してしまい……!?

そんな冒頭から始まり、一章まで読了しました。
王道な異世界転移ファンタジーという題材の中で、個性的なキャラ同士の掛け合いが持ち味の作品だと思いました。
特に妹の陽菜子こと『ヒナ』はハイテンションで突拍子のない言動も多く、見ているだけでも楽しい気分になれそうだと思えるほど、魅力的な印象を持てるキャラクターでした。
異世界に飛ばされてから出会った人々なども(中には人じゃないのも……)、それぞれに強い個性や役割があって、『捨てキャラ』が少ないのも良かったです。
そんな印象的なキャラ同士が織り成す、パロディやギャグといった愉快な掛け合いがテンポ良く展開され、オタク知識や元ネタを知る人ならば、クスリと笑える要素がたっぷり詰まっていました。
しかし中盤からは物語が大きく動き、八尋達を襲う陰謀や脅威、そして散りばめられた伏線や謎も多く、単なるギャグ作品で終わらなかったのも特徴的だったと思います。

ただ、知恵や工夫・機転と度胸で敵を退ける展開自体は良かったですが、コメディ要素が減ってしまい終盤は『普通の異世界ファンタジー』っぽくなってしまったかな、という印象も抱きました。前半のコメディと後半のシリアスで上手く混ざり合えば良かったと思いますが、個人的には二つの要素がイマイチ一つにはまとまりきっていないと感じました。
更に、ギャグやコメディというのは『作者のセンス』と『読者の好み』によって評価が大きく変わることもあり、波長が合う人や元ネタを知る人には楽しんでもらえると思いますが、そうでない人には最後まで読んで貰えるかどうか、断言はできないです。……ですがそこは今作の内容や技量どうこうではなく、コメディジャンルの難しさでもあるのですが。
あと細かい部分ですが、メインキャラの中で伊織の印象や活躍が一章範囲内では薄く、もっと見せ場が欲しいなとも思いました。

とはいえ異世界×コメディのジャンルが好きな人、冒頭を読んで面白いと思った方には、オススメできる作品だと思います。
明かされていない謎や異世界転移の真実、各キャラの活躍などまだまだあると思うので、今後の展開に期待です。

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