【物語は】
森の中から始まる。どうしてこんなところにいるのか分からないまま。
主人公と妹、そして幼馴染みの少年。彼らは、突然異世界に飛ばされたようだ。ある一人の訪問者と、ゲームソフトによって。一体どうしてこうなったのか、ゆっくりと明かされていくのだった。
【世界観・舞台】
序盤は森しか出て来ないので舞台について詳しく書くことは出来ないが、不思議で巨大な生き物と仲良くなれるようである。(たまたま)この生き物については、接っていくうちに人間味や可愛さを感じていく。
森の中で起きていく出来事は、兄と妹のコミカルなやり取りで面白く読みやすい。するする読めてしまう物語だが、序盤ずっと森にいるため、世界観については魔法が使えるという情報のみとなる。
彼らをここに飛ばした人物は、一体誰だったのか。箱の中のゲームは一体なんだったのだろうか。謎は多いものの特に気にならないのは、コミカルで面白いからだと言える。
異世界へ来て、初めての友達になる相手はちょっと変わった相手。だが森に詳しく心優しそうな相手だ。もし、主人公たちが里へ行ってしまったら、その相手はどうするのだろうか。愛嬌があるだけに別れがたいと感じてしまう。かといって、主人公たちが決めることなので、当然のことながら読者は口出しできない。
【登場人物・物語の魅力】
主人公は、好奇心旺盛な妹を持つ21歳の青年。この物語の妹に対する心配がどんな方向性なのか。読んでいくうちに分かって来るのだが、一言でいうなら”ガチで心配”しているのだ。
元の世界に居た頃は、妹と幼馴染みに軽蔑されるようなゲーマーであったが、異世界に転移後は、妹の個性が際立つ。
少しづれている部分を笑いとしているところが面白い。
臨機応変な兄。かなり破天荒な妹。常識的な幼馴染み。
この組み合わせはとても面白い。
話が進むと、天然で人のよさそうな人が加わる。
この人物が加わると、目的や方向性が見てくる。主人公たちは、彼を手伝うことができ、無事に街につけるのだろうか。
随所に笑ってしまう箇所あり。この兄妹のやり取りはテンポがよく、面白いため、こんな妹や兄がいたら楽しそうだなとさえ思ってしまう。二人だけの暗黙の了解のと感じてしまう、会話の内容も面白い。
【物語のみどころ】
ある日、家に謎の少女が訪ねて来て、いきなり”勇者”と言われてしまう。その後、無理矢理謎のものを押し付けられ、気づいたら異世界に飛ばされていた。
付いた先は森。
目的も分からぬまま、森を彷徨う一行に妹によって最初のピンチが訪れる。
結果から始まり、時を戻すスタイルで進んでいく物語である。
神官に出逢った彼らは、無事に彼の探し物を見つけ、街にいくことができるのだろうか?
あなたもお手に取られてみませんか?
破天荒であり自由人でありながら、人見知りという意外性をもった妹に振り回されながらも、何とか彼らをまとめながら目的を見つけようとする主人公。
彼らは何故この世界に転移させられたのだろうか。まだ謎に包まれている部分は多いですが、とても面白い物語です。
彼らのその先を是非その目で確かめてみてくださいね。お奨めです。
社会人の『神崎八尋』と14歳の妹『陽菜子』、そして陽菜子の家庭教師を務める少年『和泉伊織』は幼馴染。いつも通りの日常を過ごしていた三人だったが、謎の少女に渡されたゲーム機のような箱を起動すると、異世界へと転移してしまい……!?
そんな冒頭から始まり、一章まで読了しました。
王道な異世界転移ファンタジーという題材の中で、個性的なキャラ同士の掛け合いが持ち味の作品だと思いました。
特に妹の陽菜子こと『ヒナ』はハイテンションで突拍子のない言動も多く、見ているだけでも楽しい気分になれそうだと思えるほど、魅力的な印象を持てるキャラクターでした。
異世界に飛ばされてから出会った人々なども(中には人じゃないのも……)、それぞれに強い個性や役割があって、『捨てキャラ』が少ないのも良かったです。
そんな印象的なキャラ同士が織り成す、パロディやギャグといった愉快な掛け合いがテンポ良く展開され、オタク知識や元ネタを知る人ならば、クスリと笑える要素がたっぷり詰まっていました。
しかし中盤からは物語が大きく動き、八尋達を襲う陰謀や脅威、そして散りばめられた伏線や謎も多く、単なるギャグ作品で終わらなかったのも特徴的だったと思います。
ただ、知恵や工夫・機転と度胸で敵を退ける展開自体は良かったですが、コメディ要素が減ってしまい終盤は『普通の異世界ファンタジー』っぽくなってしまったかな、という印象も抱きました。前半のコメディと後半のシリアスで上手く混ざり合えば良かったと思いますが、個人的には二つの要素がイマイチ一つにはまとまりきっていないと感じました。
更に、ギャグやコメディというのは『作者のセンス』と『読者の好み』によって評価が大きく変わることもあり、波長が合う人や元ネタを知る人には楽しんでもらえると思いますが、そうでない人には最後まで読んで貰えるかどうか、断言はできないです。……ですがそこは今作の内容や技量どうこうではなく、コメディジャンルの難しさでもあるのですが。
あと細かい部分ですが、メインキャラの中で伊織の印象や活躍が一章範囲内では薄く、もっと見せ場が欲しいなとも思いました。
とはいえ異世界×コメディのジャンルが好きな人、冒頭を読んで面白いと思った方には、オススメできる作品だと思います。
明かされていない謎や異世界転移の真実、各キャラの活躍などまだまだあると思うので、今後の展開に期待です。