概要
数多の神秘をご覧あれ。一切れの魔術譚を召し上がれ。
魔術というのは奥が深い。言語、歴史、数学、地理、伝統………どれを取っても、魔術ほど広義でないし、その知識量は秤にかけることも烏滸がましい。
いや、いっそ愚かと言える。
私は、決して他の学問を蔑視している訳でも、侮辱している訳でもない。
これは純然たる事実だからだ。
魔術というのは、どの学問よりも古く、歴史の長い学問だ。
誰も極めるまでに届かず、せめて一部だけでも深淵に指先程度しか触れる事を許されない。
深淵はどこまでも深く、底の見えない穴そのもの。いつか届く天上とは違い、先の見えぬ暗がりを進むようなものだ。
ああ、道半ばで至れぬ事を、私は生涯悔やむだろう。己が生が潰える事を呪うだろう。しかし、私は不老不死でない事に悔やんではいない。
この生に終わりがあると知っているからこそ、私は賢者と呼ばれ
いや、いっそ愚かと言える。
私は、決して他の学問を蔑視している訳でも、侮辱している訳でもない。
これは純然たる事実だからだ。
魔術というのは、どの学問よりも古く、歴史の長い学問だ。
誰も極めるまでに届かず、せめて一部だけでも深淵に指先程度しか触れる事を許されない。
深淵はどこまでも深く、底の見えない穴そのもの。いつか届く天上とは違い、先の見えぬ暗がりを進むようなものだ。
ああ、道半ばで至れぬ事を、私は生涯悔やむだろう。己が生が潰える事を呪うだろう。しかし、私は不老不死でない事に悔やんではいない。
この生に終わりがあると知っているからこそ、私は賢者と呼ばれ
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!映像作品に感じる程の流暢な表現。本格的な魔術譚をご堪能あれ。
真っ先に心を惹かれたのは、書き出しの表現でした。無駄な言葉がない、それでいて的確で鮮明な背景設定。小説の冒頭から興味をくすぐられました。
レビューを書いている時点でまだ一話しかないので、現段階の評価を書かせていただきます。つらつらと評価を書き連ねたいのは山々ですが、端的に二つほど。
一つ目は、読み手に容易に描写を想像させる、研ぎ澄まされた文章力です。カクヨム広しと言えど、ここまで書ける人は少ない。そう思うレベルでの表現力でした。
全体的に物語の繋ぎは滑らかなんですが、特筆するなら、狼が蔦に襲われるシーンは感動を覚えました。鮮明すぎて、もはや悍ましさすら感じさせるような、緻密で刻明な語り口で…続きを読む