手作りお菓子に、カプチーノを添えて。

 主人公の少女には、精神疾患を抱えた母がいた。少女は父と共に母を介護していたが、父は介護に疲れ果て、少女を児童養護施設に預けてしまう。そんな少女を引き取ったのは、宿を営む優しい夫婦だった。少女は初めて自分の部屋をあてがわれ、宿で暮らすスイーツ男子の作るお菓子を食べることが出来た。
 しかし、少女は心を固く閉ざしていた。食事もお菓子も食べるものの、けして心を開かず、部屋に閉じこもり、突然前に住んでいた街に行きたいと言い出し、抜け駆けをする。元の家で、父の存在を確かめたかったのだ。しかし――。
 里親が子を試すのではない。子が親を試すのだ。
 当たり前で、忘れがちなこと。

 少年は主人公に、手作りスイーツとカプチーノを今日も用意する。
 それはやがて主人公の固くなった殻を溶かすだろう。

 是非、是非、御一読下さい。