走ることは生きること。肉体と精神の高みへ迫る物語

車椅子生活を余儀なくされた元自転車ロード選手の唯。そして野生動物の刻印のような顔のあざを持って生まれた少年、風斗。

彼らは運命の絆でつながり、自転車レースという目標に向かって一緒に進んでいきます。その過程は過酷で厳しいものでありながら、彼らは互いに力を与え合い、励まし、着実に前へと進んでいきます。
そんな二人を見守る家族もまた、信じることを諦めず、しっかりと彼らを支えています。まさに Faithの名前にふさわしい、素晴らしいチームです。

実在する自転車レースでの迫真の描写に加え、そこで風を切る者の極限の精神状態がリアルな筆致で描かれます。そしてタイトルどおり、走ること=生きることへの純粋な喜びと信念が伝わってきます。

自分を信じ、肉体と精神の高みへと昇りつめる感覚。この境地はきっと身をもって知る人にしか書けない。そう感じました。そして読者としてそれを体験できるのは幸せなことだと思いました。
壮絶で崇高な世界を見せられたあとの言葉にしがたい気持ちが、読み終わっても胸の中でずっと残ります。