人生のゴールについての話【KAC2021】
朝霧 陽月
はじめでおわり
「人生のゴールってどこにあるんだろうな」
「え、どうしたんすか先輩……急にそんなことを言い出して、顔とのギャップで冗談みたいっすよ?」
「最後の顔のくだりは明らかにいらないだろ!? まったくお前は……まぁ、ただふとそう思っただけで深い意味は無いけどな」
「なーんだ、先輩もその面をしておきながら、そんなセンチメンタルなことを考えることもあるんっすね~」
「おい、言い草がさっきから更に悪化してるぞ!? それともお前は喧嘩を売ってるのか? ん?」
「まぁまぁ、人生のゴールなんて決まってるじゃないすか~」
「おい、無視か……まぁ、いい。そんな風に言うんだったら教えてみろよ」
「ズバリ死こそが人生のゴールっす」
「身も蓋もないな!? おい!! ついでに情緒もクソもねぇぞ!!」
「いやいや、だってゴールと言ったら終わりでしょ? 終わりといったら先がない……つまり死!!」
「まぁ、そうだけども!! 確かにそうだけども!!それでも心情的に違うんだよ!! ほら、もっと色々と華々しかったりとか……」
「お葬式にもお花があるっすよ?」
「思わず感極まるような……」
「告別式やお葬式だって感極まるっすけど?」
「胸が熱くなるような……」
「火葬で胸どころか骨まで綺麗に焼き尽くされることになるっすよね!!」
「ええい、全部葬式に繋げようとするんじゃねぇぇぇ!!」
「待ってください先輩、葬式だけではなく告別式もちゃんと入れてあるっすよ? まったく、気付かないなんてうっかりさんなんですから~」
「そほぼ同じじゃねぇか!? 違うんだよ、俺が言いたいのはそういうことじゃないんだよ……ほら、人生の一つの集大成みたいなものがなぁ」
「うん、じゃあ死に際っすかね?」
「お願いだから、お前は死という概念から離れてくれないかな!?」
「いやいや、人間生まれてから生きている限り、常に死という呪縛からは逃れられないわけで、それを離れるというと不老不死にでもなるしか……」
「そこまでは離れろとは言ってないからな!? というかさっきまで悪ふざけみたいな感じだったのに、急に哲学的な方向性に行くのはどうなんだよ……」
「え、じゃあどの程度死の概念から遠ざかればいいんすか? 不老不死まではいかないけども、人間の寿命を超越する程度っすか?」
「まだ、そこを掘り下げるつもりなのか!? いや、人間の寿命を超越するって、実際にやろうと思ってお前にできるものなのか?」
「いや……できるわけないでしょう、常識的に考えてみてください。そんなこと言い出すなんて……先輩頭大丈夫っすか?」
「その台詞、お前にだけは言われたくねぇんだけどもっっ!? まず勝手に人間の寿命を超越とか、言い出したのはお前の方だからな!?」
「いやー、自分過去は振り返らない主義なんで、前のことを言われても覚えてないっすよ~」
「ついさっき話してた内容なんだけども!? 記憶力がそこまでなくて、どうやって普段の生活を送ってるんだ? 大丈夫か?」
「いや、先輩との会話はくだらない内容が多すぎるんで、端から記憶から消すようにしてるだけっす」
「まさかの俺との会話限定!?」
「すっす」
「その『すっす』ってなに!?」
「まぁ、色々話をしましたがアレっすよ……人生のゴールっていうのは、その人がゴールだって思った所がそれぞれゴールで、人の数や考えの違いの分だけゴールがあるんっすよ」
「そして急にはじめの話に戻った!? しかも割と真面目にまとめたぞコイツ……!!」
「以上っす、そういうわけで先輩もちゃんと自分のゴールを見つけてくださいね~ でももし見つからなければ、全然ボクの葬式を採用しても構わないんで」
「綺麗にまとめると見せかけて、やっぱり葬式ネタをぶち込むんだな!? いや、絶対にもっと綺麗なゴールをみつけるわボケー!!」
「あはは、せいぜい頑張って下さいね~」
「おうよ」
「…………そう、もう死んだボクの分までね」
「あれ、そう言えば俺こんなところで何をしてるんだったけ? それに気のせいか今まで誰かと話をしていたような……おっといけない部活の集合時間に遅れてしまう!!」
『ははっ、まったく先輩はいつまで経ってもダメっすね~』
「ん、今やっぱりなにか……いや、何もいないか、っと部活部活っ!!」
人生のゴールについての話【KAC2021】 朝霧 陽月 @asagiri-tuyu
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