次作予告

 安芸あき多治比たんぴの城の領主となった、多治比元就もとなり

 しかしその人生は始まったばかり。

 しかも――先行く運命は波乱に富んでいた。


 主君・大内義興に従って上洛していたはずの、兄・毛利興元の帰国。


「――もう、戦にいた」


 義興に無断で帰国した興元。

 しかし興元は安芸の国人(地域領主)たちの間で同盟を結び、その盟主となって、安芸の平和と独立を画策した。


「今こそ……安芸をわが手に。そして今度こそ、大内になどおくれを取らぬよう、わが武田を精強なるものに」


 だが、安芸随一の勢力を誇る、安芸武田あきたけだ家。その当主である武田元繁は、大内家と手を切り、安芸を平定して、独立を目論む。


「――許せん。予を、虚仮こけにしおって」


 管領代となった大内義興は、京から指令を出し、毛利興元に対し、安芸武田征伐を命じた。


「――吉川きっかわ家としては、安芸武田、毛利双方どちらにもようにする」


 形の上では毛利家と連合して、安芸武田への攻勢に出ることになった吉川元経。が、自身では征かず、弟である宮庄みやのしょう経友に兵を預けて、差し向けた。


「――有田の城は……もらった!」


 猛将として知られる宮庄経友は、毛利家との連合により、安芸武田方の城・有田城を陥落させる。


「ああ……これで安芸武田との……戦も……終わ……うっ」


 安芸武田家の動きを掣肘した毛利興元だったが、帰国後からの安芸武田家への対策という大任の重圧による深酒がたたり、急死してしまう。


「――これで毛利は、終わりだ」


 毛利の宿老・志道しじ広良ひろよしは嘆いた。毛利興元の子・幸松丸は二歳の幼子だ。しかも、主君である大内義興は、京から戻れそうにない。


「――これでは毛利がたいへんじゃのう……。では、、わしが、取り仕切ってやろうかのう……」


 さらに、興元の正室、つまり幸松丸の母の実家・高橋家の当主・高橋久光が、興元の弟である元就を差し置いて、毛利家を牛耳ろうと画策する。

 好機到来と喜ぶ安芸武田・武田元繁は、毛利家を滅ぼすことを決意。手始めとして、猛将・熊谷元直に、毛利家の領土である多治比の侵略を命じた。


「――こじき若殿? ふん、初陣ういじん前の青二才など、鎧袖一触、ひと息に攻め滅ぼしてくれる」


 意気上がる熊谷元直とその軍勢が迫り来る、多治比。

 高橋家に牛耳られた毛利本家からの援軍は見込めず、そして吉川家からも援軍が間に合わず、多治比は危機に陥った。


「――兄上たちが間に合わなくとも、わたくしが!」


 吉川の妙弓みょうきゅううたわれた、その血を最も濃く引き継ぐ吉川家の姫武者が、単騎、多治比へ馬を馳せる。


「――若殿、いえ、多治比どの、征きなさい。妾のことは気にしてはなりません……どうか、どうか……ご武運を」


 継母・杉大方すぎのおおかたは、高橋家への人質として己の身を差し出す。




 ……安芸武田家との兵力の差、およそ五倍。

 毛利家の当主、毛利興元はく、残された幼主・幸松丸は、わずか二歳。

 主家・大内家の大内義興は、京から離れられない。

 毛利本家は、幸松丸の外祖父・高橋久光に牛耳られている。

 交渉の余地なく、安芸武田家は、猛将・熊谷元直を差し向けてくる。

 頼みの吉川家からの援軍も間に合わず、姫武者一騎も、たどり着くかどうか。


 絶体絶命の危機に陥った、毛利家。

 その最後の防壁となった、多治比猿掛城。


「……勝ち目は少ない。だが、無いわけではない! いざ……いざ、出陣!」


 滅亡寸前の毛利家の命運を賭け、かつてのこじき若殿は、今、ひとりの若武者として、そして大将として、初めての合戦に、初陣に挑む。


 ――のちに、「西の桶狭間」として知られる、毛利元就の初陣、有田・中井手の戦いが、今、ここにはじまる。



 ...Can a Lord become a Warlod ?










※予告なので、実際とちがうものになるかもしれません。また、「次作」を投稿出来たら(まだ執筆中です)、こちらはたぶん消します……一度、予告とかやってみたかったんです、すみません。

 というか、そもそも、投稿できなかったらすみません……ちょっとリアルが忙しくて、時間を取れる自信がありませんので。

 ではではノシ

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こじき若殿 - rising sun - 四谷軒 @gyro

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