ただ、ほのぼのしているだけではなく、メッセージ性の強い作品

【物語は】
不思議な世界観。ある戦闘風景から始まっていく。勝利で得られたのはお弁当。ここで、多様性について描かれているのが印象的。そしてここでは、多様性は当たり前であること、適材適所、助け合いと、人間の基本的なことについて語られていく。
これは自分も常々感じていることである。平等とは何かということ。戦える者が戦い、戦えないものは見ているだけ。そう思えるかもしれないが、飲み物に例えるならば、平等だからと言って全員に珈琲を配る。好きな人にとっては”嬉しい”嫌いな人にとっては”困る”ということが起きるのは想像に難くない。すなわち平等とは、同じものを渡すという事ではないのだ。
一話では、主人公である教師には”お弁当”が二つ。一見不平等に見えるかもしれないが、体格に合わせた栄養という意味では平等だ。物語のはじめから、多様性と平等について語られているのがとても印象的である。

【物語の魅力】
この物語は、ある日自分のクラスの生徒と共に、担任教師である主人公が、異世界に飛ばされるという物語。斬新なのは、生徒が椅子で戦う所。学校によくあるタイプの椅子である。しかし、何故椅子だったのかについて、詳しい経緯が書かれている為、なるほどと納得してしまう。モンスターを倒すための発想ではないという事だ。ステータスなどもあり、完全にゲームをしているような感覚で楽しめるのも良い。特性がステータス化されるという世界観。
沢山の生徒が出ており、教師である主人公視点で物語は進んでいく。多視点切り替えではない為、一部の特別な生徒以外は名前を覚えられなくても、物語の流れが理解できる。飛ばされた先の世界では、時間に合わせて必要なものを与えられるシステム。主人公も心の中で不審がっているが、ご都合主義なのが気になる点。何かに支配された世界なのだろうかと疑ってしまう、不思議な物語である。彼らは果たして、無事に戻ることが出来るのであろうか?

【登場人物の魅力】
この物語には、個性的な生徒がたくさん出てくる。多様性とは当たり前であり、個人個人発想も違う。だからこそ助け合えると感じる部分がたくさんあり、一見弱いだけに見える主人公がそれらを認めることでバランスが取れている。この物語では主人公は解説者であり、理解者であり、語り手なのだ。
子供たちの多様性を通し語られるのは、人間とは何かという事なのではないだろうか。何故、主人公は教育者なのか。どうして子供たちが、自由な発想が出来る年代なのか。そこに意味のある物語だと感じる。かなりテーマの深い作品だ。

【物語の見どころ】
ほのぼのしているように見え、計算された世界。子供たちは疑うことなく、自分の感性を信じている。自由な発想が自分たちを救い、仲間も救っていく。椅子一つから産まれる発想もまた自由だ。そして最大の魅力は個性。椅子が持つ力は、椅子そのものにあるわけではなく、個人個人の想いによるもの。つまり椅子は象徴でしかなく、本当は子供たちの想いの結晶なのかもしれない。成長し、団結力が強くなっていく生徒たち。そんな彼らにこの先、待ち受けるものとは何だろうか。主人公視点では、推理も展開されていく。果たして、この世界が彼らを呼んだ目的とは?

是非あなたも、お手に取られてみませんか?
一見ほのぼのだが、メッセージ性が強く、ミステリー部分もあり。
読む手が止まらなくなる物語。おススメです。

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