エーコー症候群

ある女子高生の頬から首はくすんだ煌めきの紅水晶<ローズクォーツ>に覆われていた。
ある成人女性の胸元からは青く寂しげな紫陽花が咲き誇った。
ある女子大生の血液は空気に触れたその瞬間、甘い砂糖菓子に変化し零れ落ちた。
ある女子中学生の小さな背中は、――不穏な気配だけを残して沈黙している。

叶わぬ恋に身をやつし、遂には肉体を失って木霊となった神話の妖精エーコー。
その名を冠した原因不明の病は、叶わぬ恋に絶望した若い女性に発症する。

その病に身と心を蝕まれた4人の女性が、それぞれの季節に生きていた。
これは4つの恋の結果、あるいは末路。

哀哭と共に全盛を誇る恋の終わりの絶望を、白々しいほど美しく飾りつける病。
目を瞑り耳を塞げば、ありきたりな恋の話。


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