物語という病に罹患する

『事実は小説よりも奇なり』とはよく言われるが、事実とは何であろう。
事実とは、『実際に起きた事柄』『現実にある事柄』だと定義されている。

また小説とはフィクションである。
フィクションとは『事実でないことを事実らしく作り上げること』とされている。

では、誰かから話を聞いた時、現実に良くできた話であればあるほど、それが事実であるのかフィクションであるのかを瞬時に判別するのは何処にあるのだろう。

奇を衒った話であれば、フィクションとするのだろうか? 事実は小説よりも奇なりと言っておきながら?

この作品『Vampire J.C. 〜極東吸血鬼異聞〜』を読むとそれらのことが不意に頭を過ぎる。
緻密な世界観、見事な筆致。

紡がれる物語は、もしかしたら『事実なのではないか』と読者を惑わせる。

鍵となる言葉は『彷徨える猶太人の真実』だ。
イエス・キリストから呪われたこの男は、最後の審判の日まで死ぬことも定住することも許されることなく世界を放浪するとされている。

なぜキリストは、そのような呪いをかけることが可能だったのか。
それを解き明かすことから物語は動き出す。

舞台となるのは『兵庫県神戸市に建つ兵庫県立医科大学附属病院』その時代は『昭和23年』時代背景も、登場人物たちもまた魅力的だ。

非常に良く出来たフィクションである。
いや、フィクションなのだろうか?
ぜひ、自身のその眼をもって確かめて欲しい。
ひょっとしたら、これは……。

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