あの頃の自分がいた

そう、中学生だった。
自意識過剰で、肥大化する自己を持て余し、自分の世界に閉じこもって、行き場のない思いを抱えて鬱屈とした日々を過ごしていた。

――あの頃。

くだらないことで笑って、馬鹿をやって虚勢を張って、自分も他人も敵に回して、世の中なんてくだらないと思ってた。

――いつだって。

誰かに自分を知って欲しくて、でも、だからといって恥ずかしげもなく曝け出せる自分などありもせず(自分でも自身のことなど理解していないのだから、当然ではあるが)情けなくもどうしようもない毎日。
また、今、そのことで悩んでいる人もいると思う。

自分、友人、好きな人、先輩、先生。
狭い世界が、全てだった。

物語は主人公の軽妙な語り口で、進む。
彼は巧みに笑いを誘い、読み進めるうちに彼と同じように憤りを感じ、やがて彼の痛みを知り、いつしか彼を通して、あの頃の自分を見つめている筈だ。

ぜひ、読んで欲しい。
いや、読まなくては、勿体ない。

読んでいただけたら、分かると思う。
ひと息で読み終え、レビューを書くことが苦手な私が、どうしても書かずにはいられなかった、そのわけが。