第7話 ダイヤモンドの街角

8月の終わり、運転免許をとった。


高校時代、占い喫茶店が、ブームだった。

はじめて占ってもらったときに、「絵と文章で芽がでる」と話してくれた。

その占い師さんから「運転免許をとりなさい、仕事で役立つ」と言われた。

すっかり、信じた私は、貯めてたお金をつぎ込み、教習所に通った。



そのときは。

まさか、車がくるなんて思わなかった。

父は自動車会社に勤務していた。

いきなりパンフレットを、もってきて、2年間のリースを勝手に契約した。

今思うと、函館からでていく娘を引き留めたかったのかもしれない。

当然、支払いもあり、わたしは、これでダメになると、なんとなく感じた。



ただ、車は、素晴らしかった。

自転車でも、自由になれるのに。

車は100倍以上だった。

好きなところに、行けるのだ。

自由になれる。

音楽も聴ける。



やよいちゃんと、私の前に、車という魔法の馬車がきた。


やよいちゃんに、見せたいものがあった。


それは、ダイヤモンドの街角。


ユーミンの「ダイアモンドダストが消えぬまに」の、アルバムを聴きながら、函館の街をドライブ。

函館山のふもとにある18か所の坂をめぐった。

やよいちゃんと、同じ名前の「弥生坂」

「八幡坂」「二十軒坂」「大三坂」いろんな坂から、函館の夜景を眺めた。

そこは、歌詞そのものダイヤモンドの街角だった。


函館の街が、とても美しくて、

しばらく、だまってみてたね。



なんとなく、うすれていく、夢のかけら。

考えたくなかった。

どうしたら、よいのか?わからなかった。

ただ、毎日をこなすしか、考えられなかった。


先輩たちは楽しそうだった。

彼氏もいて、仕事も順調で、おしゃれに今を楽しんでいた。


わたしは、ダイヤモンドのように輝く街のあかりを、見つめながら、ぬけだせなくなる恐怖を感じていた。

このままで、このままでいいんだろうか?


どうしたらいいんだろう。



そんなとき、中学時代のガールフレンズに会った。

彼女は、大人になっていた。


社会の中で、楽しみをもちながら生きていた

そんな彼女と出会ったのも、偶然ではないだろう。



やよいちゃんと、たくさん、ドライブした。

何時間も話した。

わたしは、キラキラした街の景色をみながら、いったい、自分は何をしたいのだろうか?

目標が、あやふやになり始めていた。




初雪が降る。

季節は12月になり。

街灯のあかりに、白い粉雪が舞った。


わたしは、虫にはみえなかった。

歌の歌詞には、見えなかった。


溜息が、凍りつき、街灯に吹きかかったようにみえた。

なんともいえない、ダイヤモンドの街角だった。
















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