第2話 出会い

4月。


雪解けあとの函館の街は、どこも埃ぽかった。

当時、スパイクタイヤを装着してよい時代、道路は粉じんが、舞い上がっていた。

ほこりっぽいのが、春の香りだった。

それこそ、グレイの街である。


私は高校卒業して、すぐに入社日を待たずに働き始めた。

頭の中は、お金を貯めることでいっぱいだった。

働いて自分の力で、都会へ行き、学校に通うのが目標だった。

就職先は学生時代からアルバイトしていたスーパーマーケット。

就活を真剣にする必要はない。

とりあえず働いてお金を稼ぐのが、目標だった。

もう後戻りできない。

親もあてにできず、自分一人で考えて決めた。


そんな4月。


自動販売機を掃除している私の前に、同期で働く女性がきた。

それが、やよいちゃんだった。

黒い丈の長いスカートをはいてた。

色白の、とても感じのよさそうな女の子だった。



「おはようございます」


「・・・おはようございます。」


声のかわいい子だった。

当時人気の菊池桃子に、よく似ていた。

わたしは、低い声。

それに、笑顔がへた。

大人からすると生意気なタイプだった。

当時の私は、ポニーテールにしていた。

ようやく髪が伸びて一本に縛ることができたばかりだった。

髪型も生意気そうだったのだろか。


店内の入り口と、事務所の案内をした。


彼女は笑顔だった。


それが初めての出会いだった。


やよいちゃんは18歳、私は19歳


色の黒い痩せた店長が、大きな目をギョロギョロさせながら嬉しそうだった。

ようやく素直そうな、理想の新入社員が入ったという態度に見えた。


「今日から入ります。よろしくお願いいたしますね」と、店内で働く従業員に、一緒に挨拶していた。


函館も、当時はちょっとした街だった。

田舎から出てきて就職する人も多かった。


でも、私は函館が、大嫌いだった。

早く、この街から出ないと、夢は叶えられないと思っていた。

だから、今の生活には、希望も光もない。

ただお金がほしかった。

東京に出るにはいくら必要なのか?なんて、考えられなかった。

考えられないほど、大金だってことは、なんとなくわかっていた。


あずき色の制服を着て、エプロンをして、小さなメモ帳をもち、仕事の段取りを教わる。私のエプロンのポケットの中には、くたびれたメモ帳が揺れていた。


ボロボロになるのに、時間はかからない。

帰りの水仕事で、毎日、メモ帳は涙のように濡れていった。


「蛍の光」の曲が、鳴るのを、いつも、待った。

なんど、聞くと、終わりがくるのだろうと、考えながら。

毎日、生臭い血の匂いをかいていた。


そのなかで、あたらしい笑顔の同期がやってきた。





















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