ガールフレンズ

haruto

第1話 ガールフレンズ

「もし私が消えちゃっても、やすこちゃん、元気でね」


仲良しのガールフレンズ。

久しぶりに会って話したとき、言われた。


あなたに助けられ、あなたに励まされて、あなたがいなかったら、

あの辛い日をのりこえられなかったのに、なにを言うの?


クリスマスがくる12月。

雪の降らない暖かい日を選んで、車を走らせ会いに行く。

プレゼントを手渡したくて。



今年もクリスマスがくる。

ユーミンのうたと、大好きなお友達、やよいちゃんの顔が浮かぶ。


33年前、あなたに会ってから、ずっと、ふたりはクリスマスカードとプレゼント交換したね。いまも、とっても楽しみにしてる。


今年は、妹が作ったリースと、チョコレート、イギリス製のハンドクリーム、手作りのポーチを送りました。

いつもとっても喜んでくれて、贈る私もとっても嬉しいです。


なんで?消えるの?消えないよね。

消えたら困る。


やよいちゃんは、体調が悪いようです。

良い時と、悪い時があるみたい。

今日は寒かったから、少し悪い日だったのかな?


ちょうど、50代はそんな時期。

いつか消えたらごめんなさいと、話したかったのかな?

それなら私も同じ。



少し肌寒い朝日の中、二人で話す。

笑顔は昔のままだ。


出会いは33年前。

私が19歳で、やよいちゃんが18歳。


何もかも嫌で、投げやりだった私と、田舎から出てきて希望いっぱいのやよいちゃんだった。

ふたりは、まったく違ってた。

だから、わたしは、やよいちゃんに希望をもらった。

極端な話、生きていくことができた。

彼女がいなかったら、死んでいた。

家にひきこもるか、車で海に飛び込むかしてた。

辛い19歳だった。


夢なんか持つものではない。

現実味のない夢なんかのせいで、人間は苦しむ。


わたしは夢のせいで、辛い心を抱えていた。


そんな私を、素敵だといつも励ましてくれたやよいちゃん。

彼女のクリスマスプレゼントが、毎年、あの日を思い出させてくれる。

幼い二人は、現実の中で、戦っていたけど、彼女は笑顔だった。

ふたりの手は荒れて、絆創膏だらけだった。

ガーゼのハンカチが皮膚に引っかかっるほど、荒れていた。

指輪もブレスレットも似合わない。

安物のコートを着て、ちっとも希望なんかない世界の中だった。

でも、クリスマスを楽しみにしてたね。

若かった。


灯かりの消えたショーウィンドを眺めて、うるさい音を立てて走る電車を笑ってみた。

仕事が終わると真っ暗、二人で歌をうたったね。

電球に舞う雪がきれいで、「素敵だね」と話したね。


あの頃のことは、二人は忘れない。

いまもいつも、毎年、クリスマスになると話すね。


だから、消えないでね。

突然消えないでね。


ガールフレンズ。


大好きなお友達。


あれから2か月すぎたよ。

お互い元気でやっているね。


いつかお互い消える日がきても、必ず会えるよ。

ふたりで見たダイアモンドの街角を、忘れたりはしないもの。


そんな私たちのことを書きました。

忘れないように。


あのときは頑張ってたね。

泣きながら笑っていた1987年の出来事の物語です。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る