第5話 小さな灯(あかり)
夢は、自分でも具体的にはわからなかった。
小さなころから、絵がうまいといわれて、美術だけは褒められた。
文章もいつも、褒められた。
どういった仕事に就くとよいのか?など、わからなかった。
漠然と、芸術学校への進学を望んだ。
でも現実はお金である。
経済能力のない家庭では、無理である。
現実味のない職業にかける親などいない。
親は、看護学校ならよい。と、話した。
だから、高校3年のクラスは、看護師をめざすクラスに入った。
興味がなくとも、函館を出るチャンスはある。
でも現実、看護科の友達は、みんな本気だった。
理科の試験。
これからある受験。
夢をもち頑張る友たちは、すべて真剣だった。
自動的にわたしは、窓の外ばかり見るようになる。
ミッションスクールは、大好きだった。
幼稚園もミッションだった。
工作も踊りも歌も大好き。
幼稚園は、楽しかった。
やりたい役もやらせてくれた。
絵を描くと褒められて、工作を作ると褒められて。
わたしを受け止めてくれた。
前に出て、ハキハキ自分らしく、後ろに隠れるわけもなく、楽しい世界だった。
いっぺんしたのは、小学校だった。
小学校は、地獄だった。
小学一年生、ひらがなが読めないと、黒板の前で叩かれた。
当時の教師は、暴力をふるった。
7歳の子供にも容赦しなかった。
軍人のような男性教師だった。
竹刀を持っていた。
新しい家に引っ越し転校する。
優しい女性の担任になった。
2年、3年も、優しい理科の男性教師。
文章がうまいと、褒めてくれた。
先生の家で産まれた、黄色いインコもくれた。
私の良いところを引きだしてくれる良い先生だった。
だから、苦手な算数も頑張った。
そして、また悪夢。
小学4年生から6年生まで、鬼婆のような中年教師になった。
勉強がすべて。
子供をランク付けした。
問題が解けないと、いつまでも居残りさせて、子供たちの前で、見せしめにした。
居残り5人は、いつもの仲間。
わたしもその一人。
だいたいこの人のやり方に不満があった。
ある日の夕方。
この鬼婆教師は、いつものように大股ひらいて、私たち居残り5人に向かって話した。
「お前たちは、カ・ミ・ク・ズ・ダ!」
指を折って、数える。
ちょうど、5人。
5本の指を折って大声で笑った。
許せなかった。
いまなら、訴えてやることができる。
でも、当時、私は小学生だ。
いつも泣いていた。
親にも訴えられなかった。
子供心に、恥ずかしく思えた。
突然、我慢していた心の中の涙が、出る瞬間があった。
当時のことを知る友達は、「いつも、学校で泣いてたね。」と話す。
泣くわけがあった。
教室では、教師が絶対権を握っている。
生徒たちは、たちむかえない。
黒と言ったら黒。
最悪な3年間だった。
でもそんなときでも、友達がいた。
絵をかいて、言葉で話し。
笑い、自然で遊んで、自分の中にある小さな灯を大切にもつことを忘れずに。
優しい友達がいた。
そして19歳。
漠然とした夢につぶされそうな日々に。
やよいちゃんは、私の中の小さな灯を、見つけてくれた。
あの辛かった日々の中、あなたは、わたしを見つけてくれた。
そして、いまも、仲良くしている。
クリスマスになると、彼女を、思い出さずにはいられない。
33年間のなかに、いただいたたくさんのプレゼントと、クリスマスカード。
はじめて、社会にでた、つぶれそうな心を支えてくれた。
お互いが、どうしょうもない現実の中で、素敵な景色をみようと、がむしゃらだった。美しいものを眺めて、音楽を聴いて、優しい言葉をかけあう。
一日の中で、嫌なことがあっても、いいことの割合を心の中に広げようと、努力してたね。
小さな灯を、消さないように頑張ったね。
いまも、お互いに励ましあい、いたわりあう、そんなガールフレンズがいます。
あの時の、教師に言いたい。
あなたたちは、いま、お友達がいますか?
小さな灯(あかり)は、ありますか?
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