第5話 毒龍と飛龍

【1】


 紫の体躯に漆黒の翼


 恐らくはこのアインの隠しエリアから生まれた未知のダンジョンのボスモンスター


毒龍ポイズンドラゴン……」


 こちらを射抜くような鋭い白銀の瞳


「グルルルルルルルルル……」


 毒龍はこちらに気がつくとゆっくりと足を踏み入れる。ドスン、ドスンと地面が振動するのを感じた


「メア、援護を頼む。あいつは俺が倒すッ」


 足に力を入れ一気に距離を詰める


 毒龍はルイへ視線を向け腕を振り払う。地面を抉るかの如く腕が接近するが後ろへジャンプして避ける。避けながらインパクトを腕へ当てる


「グルァァァァッッッ!」


 怒りに震えた毒龍は大きく息を吸い込み、そして口から紫色の煙を吐き出した


「ルイ! 避けて──」


 名前と色から薄々気づいていたがこのモンスターは毒のブレスまで使うのか、またしても後ろへジャンプして避けたがこれでは近づけない。近づこうとしても腕の振り払いやブレスがきたら下がらなければならない


 インパクトやマグナムを確実に当てるには毒龍にもう少し近づかなければならない、ルイとの距離は約50メートル。最低でも30メートルは近づかなければ当てれない


「もう一度近づくか」


 答えは簡単でした。当てられないなら当てられる場所まで移動すればいい、撃って下がってを繰り返せば倒せるかもしれない


 足に力を入れて今度は右斜めへ走る。毒龍はすぐにブレス体勢を取るがそこで左へ向きを変える


「グルォォォッ!」


 毒のブレスが放たれるがそこには既にルイは居らず左へ向けて走っていた


「──いける!」


 ブレスを避け30メートル内に入りマグナムを毒龍の足へ向けて数発放つ。そして毒龍が怯んだ瞬間に前方へダッシュ、一気に距離を詰めていく


「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 毒龍の10メートル手前まで走りきったルイは頭部へ向けてマグナムを撃ちインパクトで押し込んだ


「『マグナム』、からの『インパクト』」


 頭部に衝撃波が走りルイの全身にもピリピリとした波が伝わる。そして爆発が起きて煙が立つ


 そしてぼこん、と音を立てて頭部が消滅する


 勝利を確信したルイは後ろを振り返りメアへ向けて手を振った


「よし、倒したぞ! 鍵を探──」


 メアは震える手で後方を指さしておりそれに気づいたルイも後ろを振り返る


「そ……」


 完全に消滅したと思われる毒龍の頭が、頭部が再生していた


「う……?」


 毒龍はゆっくりと足を持ち上げ──地面に全力でうちつけた


「グルァァァァッッッ!!」


「まじで?」


「──────ルイ、逃げてぇぇぇ」


 地面が揺れる。それはもう大変強い勢いで


 毒龍が立っている地面からこちらに向けて地面にヒビが入りルイを中心にして周りヒビが広がっていく


 ルイは心の中で思ってしまった


 ──あ、これやばいな


 逃げようとしても足が地面に突き刺さってしまい動けず、このまま落ちるのを待つだけである


 どごぉん、と。割れた地面ごと下へ落ちていくのを重力に身を任せながら感じていく


「グルァァァァァァァァァッッッ!」


「ルイぃぃぃ!」


 残されたメア、残る毒龍


「グルルルルルルル……」


 毒龍はメアへ向けてブレスを吐き出した


【2】


「……う、どこまで落ちたんだろ」


 全身に衝撃が走り痛みとともに目が覚めたルイは自分にヒールを使いながら周りを見渡した。毒龍がいた部屋と同じ構造で薄暗く広い空間だった


 上を見上げると光が見える、恐らくは一階層分落とされたのだろう。再生能力がある以上残されたメアも心配である


「頭ぶっ飛ばしても再生するモンスターにどうやって勝てってんだよ……」


 上へ上がろうとしても軽く20メートルは上です。ジャンプしても届くわけもなく、それならばと創造魔法に頼ることにした


「イメージは、空を飛ぶ……」


【エアステップ:空中で1度のみ

 空気の床を蹴ることができる 】


 創造魔法により新たに創られた魔法──エアステップ、これであとは上昇スキルを合わせれば毒龍の元へ行けるだろう


「よし、『エアステッ』──ッッッ!?」


 目的地を定めるため上の光を見つめていたとき、ふいに光が塞がった。そしてそこには


「キュルルルルル……」


 銀色の翼をはためかせた空飛ぶ龍──飛龍ワイバーンがこちらを見据えて低く唸っていました


 すぐにでも毒龍のもとへ向かいメアを手助けしたいがそうも言ってられなくなってしまった


「飛龍か、飛んでる相手に対してマグナムを撃ち込むのはかなり難しい……」


 そう、飛龍は常に上空にいて、飛行しながら攻撃ができるので下にいるルイは不利ということになる。マグナムで狙うにしても上空で飛行する龍を撃ち落とすのは難儀であった


 エアステップを使えば──あるいは、なんとか近づくことができればマグナムを当てれる


 とりあえず実行することに決めたルイはエアステップを使い上へ飛翔、上昇スキルにより高くジャンプしたルイは飛龍のすぐ近くまで瞬時に移動することに成功。すかさず手のひらを飛龍にむけてマグナムを放つがあっさりと避けられてしまいそのまま飛龍が突撃を開始した


「くそ、避けられな──ぐふっ、あ、がは」


 空中にいるルイは避けることが出来ず高速で突撃してきた飛龍に吹っ飛ばされ鈍い衝撃と共に下へ叩きつけられる。背中を中心に激痛が走りズキリとした痛みも現れる


 飛龍は上空の元いた位置に戻ると翼を縮めて──そして、力強く広げた。広げられた翼から放たれたのは12つの礫


「ぐ、い……『インパクト』ッ」


 痛みに耐えながら目の前にインパクトを放つ、礫に衝撃波を与え威力を相殺。結果的に礫はルイに当たらず防御に成功した


「飛龍、なんて強さだ……」


 礫による攻撃が失敗したと感じとった飛龍は翼を折りたたむと真下へ急降下した


「キュルルルルルッッッ!」


 ──ルイへ向けて甲高い声を上げながら


 ────────────────────

 こんばんは、めるです。

 まずは謝辞を、第5話も読んで頂きありがとうございました。よければレビューと作品のフォローをお願いします。

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 それではまた第6話で会いましょう







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