第6話 複合術式

【1】


「ぐっ……!」


 既に疲弊した体を無理やり動かして飛龍の突撃を回避する。ヒールを使ってはいるがそれは傷を癒す程度の効果しかなく今の状況では回復が間に合わなかった


 飛龍が翼を折りたたみ急降下して地面に降りたところを狙いマグナムを放つ。しかし、当たる直前に避けられてしまう


 飛龍は攻撃速度、反応速度、移動速度が全て高いモンスターである。ただし防御力は皆無と言っていいほどなく少しダメージを与えれれば倒せるのだ


 マグナムもインパクトも速い魔法ではあるが飛龍のスピードはそれすらも凌駕してしまう


「キュルァァァァァッッッ!」


「『インパクト』ッッッ!」


 着地したとこを狙いマグナムを撃ちに近づこうとすればすぐに礫が放たれる。インパクトで衝撃を与え避けるが接近できたときには飛龍は空を飛んでいた


「創造魔法、これさえ使えば……」


 創造魔法とは頭の中で強くイメージしたものを魔法として再現する魔法。一見最強の魔法と思われてしまうがこれには強いイメージ力が問われる。それもかなりのイメージ力を


 それをこの戦闘中にできるかと言われたら無理だと判断した。イメージしている間にやられて終わりだ、だからこそ今持てる限りの魔法を駆使してこのモンスターに勝たなければならない


 インパクト、マグナム、エアステップ。魔力操作に気配察知、上昇スキル。これを使ってどうやったら勝てるのだろうか。エアステップを使い接近できればマグナムを放てる、しかしこちらの素早さより飛龍の方が断然速い


「──くっ、さっきから」


 飛龍は上空からひたすら礫を放つ


 ルイはひたすらインパクトで防御する


「この、飛龍……うざいんだよ!」


 持てる限り全力の声を荒らげエアステップと上昇スキルを使い飛龍の目の前へ跳んだ


「キュル……」


 飛龍を首を後ろに軽く下げると小さく吠えた


 そして飛龍の目の前へ展開される魔法陣


「キュルァァァァァッッッ!」


 ──防御魔法


 そう悟ったがチャンスを逃すわけもなく魔法陣ごと飛龍を狙いマグナムを放った


 ガキィン、と甲高い音を立ててマグナムは跳ね返された。そして隙が生まれたルイを放置するほど飛龍は甘くはなかった


「『インパクト』ッッッ!」


 目の前へインパクトを放ち数秒飛龍が突撃するのを躊躇った。そして魔法陣が消えたのを確認してマグナムを放つ


「キュルァァァァァ」


 またしても首を後ろへ下げ前方に魔法陣を展開してマグナムを跳ね返した飛龍は展開したままこちらへ突っ込んできた


「──な」


 インパクトを使っても意味がない


 いや、意味はあった


「『インパクト』」


 自分の頭から上にインパクトを放つ。衝撃により空中で滞空していたルイの体は下へ落ちる


 そしてその上を通り過ぎる飛龍


 自らに衝撃を与え緊急回避に成功したルイは背中を無防備にさらけ出している飛龍へマグナムを放った


「キュァ」


 短い悲鳴とともに飛龍の翼を撃ち抜く。しかし致命傷にはならなかったようでまだ倒れてはいない、さらに分かったことがありあの魔法陣による防御は前方にしか意味を成さないこと。これだけ分かれば十分勝てる相手


 ルイは地面を走りながらマグナムを放つ。魔力操作をしながら


 飛龍を狙うわけでもなくただひたすらに色んな箇所にマグナムを放つ。──そして魔力操作を発動させていく


 飛龍はルイの行動に対してただじっと見ているだけだった


 そして今度はエアステップを使って周りにマグナムを放つ、上昇スキルも使い1番高いとこにもマグナムを放つ。滞空時間を利用してありったけのマグナムを放つルイを目がけて飛龍が礫を放ちながら突撃を開始した


 インパクトによる礫の衝撃緩和を行いつつルイはつい笑ってしまった


 飛龍が現在飛んでいる場所はこの部屋の真ん中。そして周りにはさきほどルイが放ちまくったがあった


「かかったな飛龍、マグナムを放ちそれを魔力操作で静止させる。あとは誘い込んで


 前方にしか魔法陣を展開できず、素早く動き回るのなら全方位から一斉に魔法を放てば必ず当たる──そう考えたのだ


 飛龍はその考えにも気づかず突撃の手を緩めない


「複合術式──『マグナムバースト』」


 そう唱えた瞬間、全方位に散らばっているマグナムが飛龍の方へ向きを変え一斉に動いた


「ギュルァァァァァァァァッッッ」


 魔法陣すら間に合わず全身に銃弾を浴びた飛龍は身体中を穴だらけにして赤い鮮血を撒き散らしながら落下を始める


「『インパクト』」


 トドメの一撃を加え飛龍を倒したルイは疲れのあまりどかっと地面に座り込んだ


 上ではもうなにも音が聞こえなかった。先程までしていた戦闘音が消えていることに気が付きバッと立ち上がるとエアステップと上昇スキルを使い上へ飛び上がった


「メア……無事でいてくれ」


【2】


 一方ルイが下へ落ちていった頃


「グルルルルルルルルル……」


 メアは毒龍と対峙していた


「ルイ……大丈夫だよね。今はこっちに集中しないとッ」


 メアはは横から振り払われてきた毒龍の腕を魔法の剣を飛ばして切り飛ばす


「『ライトニングソード』」


 左からもきていた腕を魔法で切り飛ばす


 しかし先に切り飛ばした右腕が目の前までやってきていた


「え、再生がはや──」


 横腹に衝撃が走る。とてつもない痛みだった


「な、左腕も──!?」


 切り飛ばして数秒しか経っていないというのに既に再生しておりその勢いのまま左腕も振り切った。結果的に右腕で吹き飛ばされたメアに当たることはなかったがそれでもかなりのダメージをくらった


「こんなの、どうやって勝てば……」


 ルイが頭を爆発させても死ななかった毒龍


 両腕を切り飛ばしてもすぐに再生する驚異的な再生速度


「グルルルルルルルルル……」


 カチ、カチと歯を噛み鳴らした毒龍は大きく息を吸い込んだ


「やばい、ブレスがくる」


 前方広範囲に繰り出す毒のブレスに対処するため後方へ距離をとる。しかし毒龍の口から放たれたのは一筋の光線だった


 伸びてくる光線はそのまま地面をえぐりながらメアの方へ向かっていく


「ブレスじゃない!? 『リフレクト』ッ」


 リフレクトの魔法を使い眼前へ長方形の魔法陣を展開する。光線は真っ直ぐこちらへ向かうと丁度リフレクトの魔法に当たり──


「よし、反撃!」


 反転して毒龍のほうへ向かっていった


 光線はそのまま毒龍の体に突き刺さり──


「グルァァァァ!!」


 全身を淡い光に包まれながら苦しみ始めた


 再生はしている様子がなく、まさか弱点属性だったのか……? と考える


 あとはトドメを刺せば倒せる、そう思い込み前へ足を踏み入れた


「──へぇ、結構頑張りましたね」


「黙れケルト。さっさと終わらせるぞ」


 後ろから少年のような声と青年の声が聞こえバッと振り返る


「あ、どうもお姉さん。僕の名前はケルト、ある任務でこの場所の探索に来てたんだけど──は僕たちが持って帰りますね」


 ズドォン、と音が聞こえ音のする方を見ると白いフードを被った青年が毒龍を光の粒子へと変えていた


「あぁ、リーさん。その近くに鍵があるはずなので回収したら戻ってください」


「お前が指図するな」


 青年は毒龍が元いた場所に落ちている鍵を手にするとそのまま何事もなく姿を消していった


 やっと我に返ったメアは目の前のケルトと名乗った少年をじっと見つめた、そして


「なんで鍵を……ッ! あれは私たちが先に見つけたのよ。それを横取りするなんて」


 少年はニッコリと微笑むと


「あんな毒龍相手に手こずるような人が世界樹の鍵を持っていても無駄なだけですよ。それに僕たちにも成し遂げなければならない悲願があるのです……ッ! そのためにこの世界にある全ての鍵を見つけ出します」


 メアは言葉を出せずただじっと固まっていた


「僕はケルト。以後お見知りおきを」


 そう言って手を差し出したのと


「──メア! 大丈夫か!」


 ルイが下から飛んで戻ってきたのは同じタイミングだった


「おい、誰だお前」


 ルイはメアの目の前にいる少年に対して一切の油断もせず近づく


「『紅血』所属──ケルト」


 そう言って姿を消した


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 こんばんは、めるです!

 まずは謝辞を、今回も第6話を読んで頂きありがとうございます。レビュー、フォローお願いします。応援エピソードやコメントもお待ちしてます!それではまた第7話でお会いしましょう


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