第10話 竜人の村

【1】


 ────、──!


 なんだろう、誰かが読んでいるよな……


 ──! ──イ!


 あれ、確かプルアリムに襲われて……


 ──イ、……ル……イ!


 その後、意識を失って……


「──ルイ、ルイ!」


 ルイは目を開きガバッと身を起こした。眠っていたような感じがするが今はなにより彼女の声が聞こえたから──彼女に呼ばれたから


「メア……? メア!」


「ルイ!」


 よかった、よかったと呟きながら頬を涙で濡らしているメアの姿が目に映る。ルイは左腕が元のように動くことに気づき驚いてしまった。まさかメアが治療を……? と思っていると外から声がした


「入るぞ」


 バサッと音を立てながら中に入ってきたのは頭に2本の小角を生やし、背中に黒紫色の翼がついている女性だった。紫色の髪は短く切りそろえられているがどこか気品さえ感じられるようなオーラを纏っていた


 改めて周りを見渡すとテントの中にいたようでここからでは外の様子もわからないがおそらくここは既に『魔境』なのだろう


「……あんたが助けてくれたのか?」


 ルイは近くまで来た女性に向かって警戒を怠らずに質問を投げかける


「助けたのは私の娘さ、そして私はこの村の村長のルナ。見ての通り魔族で竜人族と呼ばれている。他に質問はあるか?」


 ルナと名乗った竜人族の女性──村長でもある彼女からは悪意を感じなかった。いまはその優しさに甘えることにして質問を続けることにした


「ここは魔境、なんだよな?」


 既にここが魔境だとは感じているが確認のため聞くに越したことはない


「魔境──といっても、入口もいい所さ。他にあった村や集落は全てに焼き払われたからね」


 王国の連中の部分をやけに強調してルイをまっすぐに見やる。その言葉を聞いた途端ルイは警戒を強くした


「といっても、別にあんた達をどうこうするつもりはないよ。人間が全員悪いやつじゃないことは私でも分かるからね」


 ただし、と付け加えて


「この村に何か危害を加えるつもりなら──絶対に許さないよ」


 そう言い放った


「こちらからは、そちらに危害を加えるつもりはない。次の質問だが──」


 そこで一旦言葉を区切る。これは聞いてもいいことなのか分からなかったが口にする


「『紅血』についてなにか知っていること、それと『四大魔獣』についてなにか知ってることがあれば教えてほしい」


 ルナは紅血の言葉を聞いた途端顔が引きっていたがすぐに直して話を聞き続ける


「『紅血』は元々獣国ルーニアの住人だ」


 ルナは淡々と説明を続けていく


「ある日獣国は『四大魔獣』鯨牙艦プルアリムによって滅ばされた。ここまでは知っているだろう」


 ここまではケルト自身も言っていたことだった。ルイはルナの口から出てくる言葉を全て頭の中で繰り返す


「国が滅んだ後、唯一生き残った住人はおよそ数十人にしか満たなかったそうだ。その後彼らは逃げるようにしてこの『魔境』へ住み着いた」


 しかし、と表情をより一層暗くさせたルナは


「数日がして王国の連中が騎士を引き連れて『魔境』へやってきた。そして始まったのは王国の連中による大量虐殺、そこにいた元獣国の住人は数名を残して死んでいった」


「…………」


 ルイはただ黙って聞くことしか出来なかった


 ルイもまた王国に恨みがあり許すつもりもなかった。しかし『紅血』も王国に恨みを持ち復讐という悲願を果たそうとしている


「生き残った数名の元獣国の住人とその場に居合わせた魔族──氷狼族によって結成されたのが『紅血』」


【2】


 ルナに一通り疑問に思っていたことを質問していき四大魔獣について聞いたとき僅かに彼女の表情に哀しみの感情を感じ取ってしまった


「『四大魔獣』確認されている個体は三体のみ『鯨牙艦プルアリム』『黒蜘蛛フォルスククリ』『血塗狼ブラドニウル』──この三体だけ。残りの一体は未だに姿を表したこともない」


 プルアリムの他にもフォルスククリ、ブラドニウルの存在をしっかりと頭に叩き込んでおく。残りの一体も気になるが今はさらに聞かなければならないことも増えた


「あの、ルナさん。あと一つだけ……『四大天』について知ってることあれば教えてほしい」


 ルナは申し訳なさそうに首を横に振る。しかしここまででも分かったことが多いのでひとまず頭の中で整理をすることに集中する


 ルナはもう少し休んでおきな、と言い残すとテントから出ていった。メアは少し外の空気を吸いに行くと行ったまま同じくテントから出ていった


 残されたルイは頭の中で整理を始める


「『紅血』のしていることは確かに間違ってはいない……俺も、王国に恨みがあるから気持ちは痛いほどわかる。王国がしようとしていることはまだ全てはわからない」


 王国がこの先なにかを仕掛けていこうともルイはメアだけは必ず守ると決めた


「俺が本当にするべきことは、なんなんだ……? 『紅血』は本当に敵なのか?」


 考えれば考えるほど頭が痛くなっていく。紅血はルイと同じく王国に恨みを持っている。その紅血の邪魔をするということはケルトからしても王国の仲間だと思ってしまっても仕方ないことだろう


「『紅血』が世界樹ほ宝石を手に入れて王国に復讐を果たせば何か変わるのか……?」


 考えても考えても結論に至らず悔しくなってきているとテントの外側からガサリと音が聞こえたかと思うと中に小さい女の子が転がり込んできた


「えっと、……きみは?」


 びたーんと伸びている少女を起こすとなにもなかったかのように座り首を横にかたむけた


「わたし? わたしはサリー、あなたの名前は、なんていうの?」


 外見はメアより少し年下といったところか、言葉遣いは完全に小学生だったが。よくみると彼女にも背中に小さく翼が生えており頭には小さく角がちょこんと出ていた


「俺はルイ」


 もしかしてこの子がルナの娘なのか? と思うがすぐにそんなことはないと首を振る。この子の見た目にそんな力があるとは思えなかったからだ。サリーはじーっとルイを見つめたまま口を開く


「にんげんは、みんなみにくい。けど、ルイは違かった、わたしを見ても暴言言わない」


 そう言ってニコリと微笑むと


「ルイは、獣人も、魔族も、にんげんも。みんな仲良くなれると、思う?」


 微笑んだまま。目はしっかりと開かれたまま


 彼女──サリーはそう問いかけた


 ────────────────────

 こんばんは、めるです

 まずは謝辞を。この度第10話を読んでくださりありがとうございます

 若干PV数が落ちてきてしまっているのでTwitterで宣伝を続けていきますので拡散してくださると大変嬉しいです

 さて、竜人の村を更新しました。ここで新キャラクターが出ましたね……!サリーは幼女です、はい。別にロリコンではないです

 さて、ここまで読んでくれた読者の皆様へ

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 それではまた第11話でお会いしましょう!


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幻想を夢みるダンジョンあるいはキミとの物語 泉芽瑠 @__Meru__

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