幻想を夢みるダンジョンあるいはキミとの物語
泉芽瑠
第1話 プロローグ
【1】
もしもダンジョンが幻想を夢みているのならば──それはきっとキミとの物語の始まりなのかもしれない
広い王室の中、ルイは黙って奥に居座る王様を睨みつけてた。目を閉じても脳内に焼き付いて離れない侮蔑の視線。適正がないというだけで一瞬にして態度が変わる周りの人間
なんで俺はこいつらのために尽くそうだなんて思えたのだろうか
「ルイよ、貴様には王宮からの追放を命じる」
無能だと罵られ有りもしない罪を擦り付けられしまいには捨てる
あぁ、本当にこいつらはクズだな
俺はこんなクズのような王様やその国を守ろうと思っていたのか
「無能の勇者よ、聞こえぬか? 貴様には王宮からの追放を命ずる。命があるだけ感謝するがいい」
そうやって力がないと分かれば態度を変えて今度は邪魔者扱いかよ。こいつらには人の心ってものはないのかよ……そうか、そうだよなそれがこの国の総意だもんな
「いつまでも突っ立ってないで何か言うことはないのか? 無能ですいません、とな!」
俺は知っている、この国は平和を愛すると言いながらも裏では獣人を差別し、奴隷として他国に売り飛ばして財政を整えている正真正銘の差別主義国家だということを
「お前らを……」
「ん? なんだ、よく聞こえぬぞ」
ここに勇者として召喚されたときはまるで物語の主人公のような気持ちでいっぱいで、この国を救うんだと言っていた
だけど──
「許さない」
そんな俺をドン底に叩き落としてくれたこの王様や、周りの人間。そしてこの国もなにもかもが嫌いだ
俺は──許さない
「許さないとはなんだ、勇者として召喚された身でありながら無能極まりない貴様が全て悪いのではなかろうか!」
日本にいた頃人権の学習で先生にこう質問されたことがある
いじめはする人間が悪いのか、それともされる側にも理由があるのだから仕方ないことなのか、と。答えは決まっている、理由がどうあれ仕方ないいじめは存在しない、していいわけがない
しかしこの王様は俺に理由があるからと、無能と言い名誉も全て奪いドン底に叩き落としてくれた
「おまえらぜんいんゆるさない」
誰にも聞こえないくらいの小さな声でそう呟いた
【2】
──勇者召喚の次の日
勇者召喚が行われた翌日、勇者の技量をぜひ見たいと王様や貴族が王宮へやってきた
そして王様は国民へ勇者がこの王国を救うために力を使ってくれると、魔族からの侵略に怯える必要はないと。そう言い放ったのである
勇者としてこの世界に召喚されたルイは一通り街を歩きこの世界の歴史をある程度学んだ
そしてとうとう魔力測定の日にちがやってきた。王宮は王国の貴族や王族が集まり皆が見守るなか魔力測定をすることになっている
期待と緊張に身を任せながらルイは魔力測定を開始した──しかし、結果は0だった。
魔力適正がなかったのだ
王様はそのとき今までの笑顔とは一変してとても冷めた視線をルイに向けていた
他の貴族や王族も言葉では大丈夫だと言ってくれたがその目には侮蔑の視線が入っていたことには気づくことはできなかった
その翌日、事件が起きた
王宮の一室にある宝物庫に眠る魔導書が盗まれた──宝物庫の見回りを担当していた騎士がそう言いルイをみると
「王様、勇者様が昨日宝物庫に入っておられました」
そんな嘘をついたのである
そしてその出来事は国民の間にも広まっていき、世間では勇者に対する考え方が変わっていた
────────────────────
はじめまして、泉芽瑠と申します
めるです、そうです。めるなんです
実は元々は月夜椎名として活動していましたが諸事情によりこうして新しく小説を作り始めました。前作より面白く読みやすい物語にしていくのでどうぞこれから毎日更新されるのでぜひ見てください。
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