エピローグ わが隊を統率するは不敗騎士
一時間も経たぬうちに、一方的な戦闘は終了。
崖上からの攻撃に対して、ケムラス軍は、ほとんど反撃できなかった。散発的に魔法を撃ってくる者もいたけれど、全てこちらの魔法に迎撃されていた。
僕も一度は死を覚悟した広場が、今はケムラス軍の死体で埋め尽くされている。
かろうじて逃げ延びた者がいるとしても、ごく少数であり、軍を立て直すほどではないだろう。ガイデ将軍率いる派遣部隊は、ここに壊滅したのだった。
「我々の完全勝利だ! これで、大手を振って王都に凱旋できるぞ!」
「おーっ!」
ゼダン隊長の勝利宣言に、部隊が沸き返る。この戦場に来て以来、一番の盛り上がりだった。
歓喜の輪の中で、ゼダン隊長は、天に向かって高々と剣を突き出している。その様子を見ながら、僕は改めて考えてしまう。
今までのアルファ隊の苦戦は、全て『慎重将軍』を誘い込むためだった。
普通に戦っていたら、なかなか『慎重将軍』は攻めてこようとせず、長期戦になっていたはず。
だが若い騎士たちを戦場に長く
「なるほど、これが『不敗騎士』なのか……」
自分でも意識しないうちに、僕の口から感嘆の声が漏れる。
ふと周りを見れば、他の新人騎士たちも、すっかり態度が変わっていた。
おそらく、僕と同じ気持ちに違いない。
ゼダン隊長に対して不満を口にしていたのが嘘みたいに、彼らの瞳はキラキラと輝き、尊敬の念が浮かんでいるのだった。
(「わが隊を統率するは不敗騎士」完)
わが隊を統率するは不敗騎士 烏川 ハル @haru_karasugawa
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